超個人的は超普遍的。自分を深く知ることでUXをひもとく
みなさんこんにちは。ブランコでデザイナーをしております園田です。
私は普段、スマホのアプリや、業務システムの管理画面など、特にUX/UIに関わるデザインを担当しています。今回は、UXの考え方について、私が感じていることをまとめてお伝えできればと思います。
普段の自分の感覚を意識する
いきなりですが、文章の書き方について私が体験したことのお話をさせてください。
文章はなんとなく書いていくと、当たりさわりのない、いわゆる一般論になっていくことが多くないでしょうか。読書感想文がいい例で、ついつい「正解のようなこと」を書いて、文章をまとめようとしがちです。
この対策として、私は学生時代に小論文の先生より「一般的な感想でなく、個人的な感覚を掘り下げて描写することで、広く普遍的に伝わる文章になる」と教わりました。先生はこれを「超個人的は超普遍的になる」と説明されていました。
この「自分を掘り下げていくと世界にいきつく…!」という感覚は手塚治虫の『火の鳥 未来編』の最後のシーンをも彷彿とさせ、当時ものすごくハッとしたのを覚えています。
ですが、いざ「自分の感覚で」書こうとしても、なかなか簡単には書けません。なぜかというと、普段の自分の感覚を意識する機会があまりないからだと思います。
無意識に選択していることを意識する
日常的に使うアプリを例に挙げてみましょう。LINEとGmail、両方ともテキストをやりとりするアプリですが、明確に違う設計になっていることがおわかりでしょうか。
LINEなどのチャットアプリは親しい人、友人とのやりとりに使用することが多いと思います。それは気軽に連絡がとれるよう、アプリが設計されているからです。
- アプリを開くと「過去に連絡した相手とのスレッド一覧」が並び、連絡をとりたい相手をタップすればすぐにやりとりを始められる
- 件名は基本的に不要
- 過去のやりとりが一覧しやすい
…となっているため、直感的にポンっと連絡ができるようになっています。テキストが吹き出しになっていたりなど、会話のような感覚でやりとりできるデザインだと思います。(ちなみに私もプライベートの連絡はほとんどLINEやメッセージなどのチャットアプリです。友人と携帯のメアドの交換をしあっていたのはいつごろだったか、もはや思い出せないくらい過去の感覚です…)
対してGmailなどメールソフトは、仕事や役所など公的機関との連絡に使用することが多いです。チャットアプリが会話であれば、こちらはまさに手紙を書く感覚に近そうです。
- メールを送るために「新規メール画面を開く」「連絡先を入力する」といった対応が要求される
- 基本的に件名が必要
- 書いているテキスト全文が見返しやすく、送信前に確認がしやすい
…などなど、気軽さより、送り先や連絡内容などに間違いが起きにくい慎重な仕様になっていることが大きな要因だと思います。
このように、それぞれのアプリを「会話みたい」「手紙みたい」となんとなく感じることはあっても、それがどういうデザインの、どこの部分から感じたものなのか、具体的に明言できる人はあまり多くないのではないでしょうか。
日常でなんとなくしている「無意識の選択」を意識し、言葉にしたりまとめたりしてみること。自分の感覚を知ることのポイントは、ここにありそうです。
自分を知ることがユーザーを知る手がかりになる
文章の書き方を例に挙げましたが、同じことがデザイン、特にUXの最適化について考える際にも言えると思います。
UXとは、ユーザーが商品やサービスを通して得ている体験のことです。それを最適化するには、ユーザーが体験にともなって抱いた印象や感覚、感情について、他の人でも追体験できるほどに掘り下げる必要があります。多くの人がなんとなく感じていそうなことを表面的になぞるだけでは、ユーザーが感覚的におこなっている「無意識の選択」までたどり着くことは困難です。
このとき、ユーザーではなく自分が自身の「無意識の選択」をどれだけ意識してきていたか、ということが重要になってきます。普段から「自分はなぜこれを選んだのか」という動機を考え、できるだけ多くストックしておくことで、さまざまなユーザー体験を深いレベルまで掘り下げ、仮説を立てることが可能になります。
ユーザーの「無意識の選択」のディテールを細かくすることで、おのずとUIデザインやブランディングの方向性は決まっていきます。敵を知るにはまず味方から、ユーザーを知るにはまず自分から。私たちは普段から自分の感覚を深く知る練習を繰り返しています。私たちといっしょに、よりよいUXの実現を目指していきませんか。