Burberryのロゴマークの変遷と時代
ロゴマークは、ブランドの一部です。しかし、それはただの一部ではありません。ブランドの心、魂、そして顔なのです。ロゴマークは、ブランドのアイデンティティの中心的存在とも言えるもので、ブランドが持つ独自性と認識可能性を提供します。
つまり、ブランドの全てを1つのシンボル、1つのイメージに凝縮したものです。ブランドのバリュー(価値)、そのビジョン、そしてそのミッションを視覚的に表現する力をも持っています。また、言葉を超えてコミュニケーションをするためのツールであり、ブランドと消費者との間のエモーショナルなつながりを作り出します。
ブランドが成長し進化するとき、そのロゴマークもまた変化していきます。ブランドが新たな市場に進出するときやその目標と価値が変わるとき、またはそのブランドが新たな世代の消費者をターゲットにするとき、そしてそのすべてを反映するためにロゴマークが変わることもあります。これは、ロゴマークがブランドの進化の一部であり、ブランドの進化の一部を記録するものだからです。
Burberryとは?
今回は、ロゴマークの遷移を具体的に見ていくために、英国の高級ファッションブランド、バーバリーの例を取り上げてみます。バーバリーは、Thomas Burberryが1856年に設立した服飾品ブランドで、特にトレンチコートで有名です。そのロゴマークは、設立以来何度も変遷を遂げてきました。
Burberryのロゴマークの変遷
バーバリーのロゴマークの旅は、ファッションハウスのスタイルの進化と同じくらいエキサイティングで、クラシックからモダン、そして極度のミニマリズムまで、その全てを辿ってきました。この魅力的な変化をさらに詳しく見てみましょう。
初期のロゴマークの特徴とデザイン
1901年に、バーバリーは最初のロゴマークとして「エクエストリアン・ナイト」を導入しました。騎士が馬に騎乗する姿を描いたこのロゴマークは、ブランドのクラシックなイメージと品質への確固たる信念を表していました。文字はラテン語で「Prorsum」(「前方へ」を意味する)と書かれており、ブランドの進取の気性と革新への志向を象徴していました。
設立初期のバーバリーのロゴマークは、シンプルでありながらも、そのブランドが持つ高級感と品質をしっかりと伝えるものとなっていました。そのロゴマークには、「Burberrys」と書かれており、バーバリーが提供する製品の上質さと、その製品を選ぶことで得られるステータスを象徴していました。
しかし、1920年代に入ると、バーバリーはそのブランドアイデンティティを一新します。今では広く認知されているチェックパターンの導入でした。このチェックパターンは、バーバリーのトレンチコートの裏地として使用され、一瞬でバーバリーを認識できる象徴となりました。これをきっかけに、バーバリーは単なる服飾品ブランドから、ライフスタイルを提案するブランドへと進化していきました。
中期のロゴマークの変化とその影響
1999年には、バーバリーはブランド名を「Burberrys」から「Burberry」に変更し、ロゴマークもそれに伴いモダン化されました。エクエストリアン・ナイトはそのまま保持され、ブランド名は大胆な書体で表現され、全体的なデザインはよりクリーンで洗練されたものになりました。
現代のロゴマークへの移行とその理由
そして、2018年に、バーバリーはそのロゴマークを再び一新しました。この新しいロゴマークは、それまでのエレガントなスタイルから一新され、モダンで力強いイメージへと生まれ変わりました。新しいロゴマークは、サンセリフ体の書体で「Burberry London England」と書かれており、このロゴマークの変更は新しいクリエイティブディレクター、Riccardo Tisciの就任とともに行われました。
この新しいロゴマークは、現代のブランドとしてのバーバリーを象徴しています。サンセリフ体の文字は、現代性と国際性を表現し、そのシンプルさは、ブランドのクリアなビジョンと未来への決意を示しています。
また、このロゴマークの変更は、より若い世代の消費者、特にミレニアル世代やジェネレーションZに対するアプローチの一環でもありました。新しい世代の消費者は、シンプルで直接的なメッセージを好み、自分たちの価値観を反映したブランドに魅力を感じます。そのためバーバリーは、自身のブランドの核となる価値を保ちつつ、新たな消費者層に対応するためにロゴマークを変更しました。
さらなるロゴマークへの変更
恥ずかしながら、私自身最近気が付いたのですが、バーバリーは2023年に再びロゴマークを変更していました。ブランド名の「Burberry」だけをシンプルに表示し、その下の「London England」の表記がなくなりました。これにより、よりシンプルで洗練されたイメージが強調されています。ブランドのアーカイブから着想を得て、ロゴマークがクラシカルなセリフ体に戻されました。
さらに、この変更はバーバリーが国際市場での地位を強化するための戦略的な決定とも解釈できます。「London England」を外すことで、ブランドは自身のルーツであるロンドンやイギリスという地域的な枠組みを超え、グローバルなブランドとしてのポジショニングを強化しました。
ロゴマークは、ブランドの一貫性を保つ一方で、時代の変化とブランドの進化に応じて変更されるべきです。バーバリーのロゴマークの変化は、ブランドが常に最新の消費者の嗜好や市場の動向を注視し、それに対応するためにブランドイメージを微調整していることを示しています。
これらの変更を通じて、バーバリーは古典的な高級感を維持しつつ、現代の消費者に響くブランドイメージを築き上げています。これは、バーバリーが市場において自身の地位を保つための戦略であり、他のブランドが学ぶべきポイントです。
これらのロゴマークの変遷を通じて、バーバリーは自身のアイデンティティを維持しつつ、進化し続ける現代の市場と消費者のニーズに対応しようという努力を示しています。それぞれのロゴマークはその時代のブランド戦略と消費者との関係を反映しており、その全てがバーバリーというブランドの物語の一部となっています。
個人的には2018年に変更されたサンセリフのロゴマークが好きだったのですが、この時期の前後に数多くのブランドがサンセリフ書体へのロゴマークの変更を行っていたため、バーバリーのブランドアイデンティティの表現をするには、埋もれてしまう危険性は高かったのかもしれません。
各時代のロゴマークがブランドイメージに与えた影響
それぞれの時代でのロゴマークの変更は、バーバリーのブランドイメージに影響を与えました。初期のロゴマークは、クラシックで洗練された英国紳士のイメージを作り上げました。中期のロゴマークは、ブランドのモダニゼーションを象徴し、新たな消費者層へのアプローチを試みました。最新のロゴマークは、今日の消費者が求めるシンプルさとモダンさを表現しています。
ロゴマーク変更の背後にあるブランディング戦略
バーバリーのロゴマーク変更は、ただ無意味に行われたものではありません。ブランド戦略の一環として、計画的に実施されているのです。新しいロゴマークは、新たな消費者層にアプローチすることを目指したものです。そのお陰で、バーバリーは現代のファッション業界における競争力を保つことができたと言えるでしょう。
バーバリーのロゴマーク変遷を通じて、ブランドが時代と共に進化し、新たな消費者層に適応しようと努力する様子を見ることができました。ロゴマークは、ブランドの歴史、価値、そしてその時代の消費者のニーズを反映したもので、ブランドのアイデンティティを形成し、強化する重要な要素となります。バーバリーの例から、ブランドが時代と共に進化し続ける必要性と、その進化がどのようにブランドイメージに影響を与えるのかを学ぶことができました。
ブランディングについてさらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
ブランディングについて | ブランコ株式会社
参考・引用元:バーバリーの歴史 | バーバリー
新生BURBERRY誕生!歴代デザイナーやブランドロゴの変化を紹介 | モードスケープ