魅力的なブランド名にするための秘訣とは。ブランド価値を高めるネーミングの技術

ブランド名は、企業や製品の最初の印象を形成し、その後のブランドイメージを大きく左右します。ブランドの個性、価値、そして目指すビジョンを伝える重要な手段です。適切なブランド名は、ブランドの認知度を高め、信頼性を築き、覚えやすさを確保します。これらはすべて、ブランド価値を高める要素となります。

ブランド名を策定するさいのネーミングの基本

ネーミングは、一見すると単純なプロセスに見えますが、実際には多くの要素を考慮する必要があります。ブランドの目指す方向性、ターゲットオーディエンス、市場環境、そして競合他社との差別化など、多くの要素が絡み合っています。また、ネーミングは一度決定すると変更が難しいため、慎重なプロセスが求められます。

ネーミングの法則性とその分類

ネーミングには、いくつかの法則性があります。実例を挙げながら分類をご説明します。

創設者の名前から取られたネーミング

創設者の名前をブランド名に使用する方法です。例えば、”Ford”は創設者のヘンリー・フォードの名前から取られています。このようなネーミングは、創設者の個性やビジョンを直接ブランドに反映させることができます。また、創設者のストーリーや価値観をブランドのストーリーとして伝えることができます。

少し前の日本では最も多いブランド名だったのではないでしょうか。◯◯建設や、◯◯電気のような創設者の名字+業種というパターンです。最近では、随分減ってきたと感じています。

地名や人名から取られたネーミング

特定の地名や人名をブランド名に使用する方法です。例えば、”Starbucks”はハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に登場する一等航海士「スターバック」から取られています。このようなネーミングは、ブランドに特定の地域や文化の要素を組み込むことができ、関連するストーリーやイメージをブランドのナラティブとして活用することができます。

また、九州電力や東京ガス、富士フィルムのように、地名に由来するブランド名は公共的な印象を与える効果があります。

象徴的なネーミング

ブランド名に特定の象徴的な意味を持つ単語を使用する方法です。例えば、”Apple”は知識と発見の象徴である「リンゴ」から名付けられました。このようなネーミングは、ブランドの価値観やビジョンを象徴的に表現することができます。また、象徴的な要素はブランドのストーリーテリングに役立ち、消費者に強い印象を与えることができます。

意味を持つ単語(主に名詞)から取られたネーミング

特定の意味を持つ単語をブランド名に使用する方法です。例えば、”Amazon”は世界最大の川であるアマゾン川から名付けられ、そのブランド名は「広大な範囲」を象徴しています。このようなネーミングは、ブランドの特性や目指す方向性を直接的に表現することができます。また、ブランド名が持つ意味はブランドのストーリーを補強し、消費者に深い印象を与えることができます。

私たちのブランド名である社名ブランコも、この分類に入ります。ちなみに、「ブランコ」は、世界に存在する絶対的な真実がないという思想の具現化です。この世界は、ある位置から別の位置へと絶えず揺れ動いており、その揺れこそが進歩と成長を促す力となると私たちは考えています。また、ブランコという言葉は、誰しもが幼少時代に乗った遊具「ぶらんこ」であり、楽しさの象徴です。楽しませる存在でいたいというブランドのストーリーも込めています。

頭字語(アクロニム)から取られたネーミング

特定のフレーズや、長い名前の頭文字を取ってブランド名に使用する方法です。例えば、”IBM”は”International Business Machines”の頭文字を取っています。このようなネーミングは、ブランドの全体的なビジョンや目標を短く、簡潔に表現することができますし、長い名前を短縮することで覚えやすく、ブランドの認知度を高める効果があります。

私たちがブランディングに携わった「FGN」も「Fukuoka Growth Next」の頭字語を取った形で、この分類に当てはまります。このパターンも日本ではかなり多いネーミングの法則です。

造語によるネーミング

ブランドが新たに作り出した単語をそのブランド名に使用する方法です。例えば、”Sony”はラテン語の「sonus」(音)と英語の「sonny」(若者)を組み合わせた造語です。このようなネーミングは、ブランドの独自性と創造性を強調することができます。また、新たに作り出されたブランド名は、ブランドの独自のストーリーやナラティブを作り出すことができます。

被りを避けやすいネーミング手法ですが、国によっては、意図していないネガティブな意味を持ってしまったり印象を与えてしまうことがあるので、慎重に確認する必要があります。

魅力的なブランド名を生むためのテクニック

音韻論

ブランド名の音は、その覚えやすさや魅力に大きく影響します。一般的には、短くて、明瞭な音節を持つブランド名が覚えやすいとされています。また、特定の音は感情的な反応を引き出すことがあり、これを利用してブランドのイメージを強化することも可能です。音節とは、言語の音声単位の一つで、一つの息づかい(一つの発声)で発音できる最小の単位を指します。音節は通常、母音音素(または同等のもの)を中心に構成され、その前後に子音音素が来ることがあります。

例えば、英語の単語 “apple” は二つの音節、”ap-” と “-ple” に分けることができます。日本語の単語「りんご」も二つの音節、「りん」と「ご」に分けることができます。

音節の数は、単語やフレーズのリズムや強弱、発音のしやすさなどに影響を与えます。そのため、ネーミングにおける音節の数は重要な要素となり、そのブランドがどれだけ覚えやすいか、口に出しやすいか、そして認識しやすいかに大きく影響します。一般的には、ブランド名は1-3音節が最も理想的とされています。これは、人間の記憶と認識の能力が、短いフレーズや単語を最も効率的に処理できるためです。

1音節のブランド名(例:Nike、Dell)は非常に強力で、一度聞いただけで覚えやすいです。しかし、1音節の単語はたびたび他のブランドや一般的な単語と競合する可能性があり、また商標登録が難しい場合があります。

2-3音節のブランド名(例:Microsoft、Adidas)は、依然として覚えやすく、口に出しやすいですが、より多くの情報や意味を含むことができます。これらの長さのブランドネームは、特定の感情やイメージを伝えるのに十分な長さを持っています。私たちのブランドネームである「ブランコ(ブ-ラン-コ)」も3音節になっています。

4音節以上のブランド名(例:Burberry、 Volkswagen)は、一般的には覚えにくく、発音も難しいとされています。しかし、これらのブランド名は独自性があり、特定の文化的な意味や歴史的な背景を持つことが多いです。

ただし、これらは一般的なガイドラインであり、必ずしも全てのブランドに適用されるわけではありません。

また、日本人は言葉を短縮することを好むため、あまり長いブランド名にすると短縮される可能性があります。どうしても長いブランド名で運用したい場合は、あらかじめ短縮語の運用も含めて検討すべきですが、ブランド名にパターンを作ること(短縮語など)は、ブランド運用のコストを高めるので、できれば避けたほうが望ましいです。

語彙の選択

具体的なブランド名は視覚的なイメージを喚起しやすく、抽象的なブランド名は広範な解釈を可能にします。また、新造語は独自性を出すのに有効ですが、理解されるまでに時間がかかることもあります。ブランド名の選択は、ブランドの目指すイメージとターゲットオーディエンスの理解度を考慮に入れて行うべきです。

文化的/地理的な考慮事項

ブランドが展開する市場の文化や地理的な要素は、ブランド名の受け取られ方に影響を与えます。特定の地域や文化に対する敬意を示す一方で、他の地域で誤解を招かないように注意が必要です。また、ブランド名が異なる言語で意図しない意味を持つことがないか確認することも重要です。

意味論

ブランド名が伝えるメッセージは、ブランドのイメージを形成する重要な要素です。ブランド名がブランドの価値観、ビジョン、特性を正確に反映していることを確認することが重要です。

市場調査

ターゲットオーディエンスの反応は、ネーミングの成功を左右します。市場調査を通じて、ターゲットオーディエンスにどのように受け取られるかを理解し、必要に応じて改善を行うことが重要です。

レビューと改訂

ネーミングは一度で成功するものではありません。反応を基に改善を行い、最終的に最適なブランド名を見つけ出すことが重要です。とはいえ、一度決めたブランド名を改善するのは非常に難しく損出も大きくなるため、説明してきた項目の調査や検討をできる限り慎重に行うことが重要です。

ネーミングがブランド価値に及ぼす影響

ネーミングは、ブランドの成功に大きく貢献し、その価値を高める重要な要素です。適切なブランド名は、ブランドの認知度を高め、信頼性を築き、覚えやすさを確保します。また、ブランドのストーリーやナラティブを伝えるための重要なツールでもあります。ブランドのストーリーは、消費者との強い結びつきを形成し、ブランドへの愛着を深めるための重要な要素です。そのため、ブランドのネーミングは、ブランド戦略の中でも重要な部分を占めると言えるでしょう。

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