ブランド戦略立案におけるユーザーインタビューの重要性

ブランドとは、製品やサービスだけでなく、それを提供する企業そのものを象徴するものです。言い換えるなら、ブランドは企業の顔であり、人々がその企業をどのように認識しているかを示します。ブランド戦略とは、この認識をどのように形成し、持続させるかについての計画のことです。そして、この計画の立案において、ユーザーインタビューは非常に重要な役割を果たします。

なぜなら、ブランドは企業の内部（創業者や経営者、従業員）と外部（顧客やパートナー）の両方からの視点で理解する必要があるからです。内部視点はブランドの考え方や価値観を、外部視点はブランドの印象を形成します。ユーザーインタビューは、外部視点を深く理解するための有効な手段となります。それは、実際のユーザー体験とブランドの目指すイメージとのギャップを明らかにすることで、そのギャップを減らすための戦略を立てる礎となるからです。

デザイン思考の視点からすると、ユーザーインタビューは「共感」ステージに該当します。これはユーザーの視点を理解し、その問題を深く洞察するプロセスで、デザイン思考の最初のステップです。このステージを通じて、ユーザーの声を直接聞くことでブランドギャップを発見し、解決策を見つけることが可能となります。

 

ブランドギャップの定義とその影響

ブランドギャップとは何かを理解するためには、まずブランドがどのように形成されるかを理解する必要があります。企業の内部（創業者や従業員）からの視点、すなわちブランドの考え方や価値観と、外部（顧客やパートナー）からの視点、すなわちブランドの印象の2つの視点から形成されます。ブランドギャップとは、これらの2つの視点、つまり企業が自身のブランドをどう捉えているか（ブランドアイデンティティ）と、顧客がそのブランドをどう捉えているか（ブランドイメージ）との間に存在する差異のことを指します。

ブランドギャップが存在すると、企業の意図するメッセージが顧客に対して正確に伝わらないだけでなく、顧客の認識と企業の意図する認識との間にミスマッチが生じ、顧客の満足度やブランドロイヤルティに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

ブランドギャップを埋める戦略

ブランドギャップを埋めるための戦略は、ブランドギャップの大きさや性質により異なりますが、一般的にはブランドのコミュニケーションの改善、製品やサービスの質の向上、顧客サービスの強化などが考えられます。しかし、これらの戦略を立案する前に、まず現状のブランドギャップを把握することが重要です。

ブランドギャップを把握し、その原因を理解するための最も効果的な手段の一つが、ユーザーインタビューです。ユーザーの意見や感想を直接聞き、理解するための方法であり、ユーザーがブランドをどのように認識しているのか、何を期待しているのかを明らかにすることができます。

 

事例紹介

株式会社シフトセブンコンサルティング様は、自治体DX（デジタルトランスフォーメーション）やふるさと納税事業の拡大のため、自社のブランディングとしてWebサイトのリニューアルを私たちにご依頼していただきました。そのプロジェクトのなかで、ユーザーインタビューを実施し、自社の価値を再認識しました。

まず、ブランドオーナーと従業員の内部インタビューを行い、起業からこれまでの想い、現状の課題、これからのビジョンなどをヒアリングしました。そのインタビューにはフォトソート法・ワードソート法という手法を用い、ワークショップ形式で行いました。ここでまず、企業の信念や目指すべき方向を洗い出しました。次に、シフトセブンコンサルティングのクライアントである行政機関の方などにインタビューを行い、どのような印象を持っているかをヒアリングしました。これにより、企業が発信したい思いと、ユーザーが抱く企業イメージのギャップをとらえる情報が出そろいました。

調査結果をもとに、ブランドの方向性を示すコンセプトを設計しました。そのコンセプトは「業務効率化は手段であり、関わる人のクリエイティブな時間をつくる。」という強い想いでした。これをもとに、Webサイトのデザインを行い、各サービスに興味をもって見てもらえるようなビジュアルを開発しました。

この事例から、ユーザーインタビューがブランド戦略立案において、自社の価値を再認識し、ブランドイメージとブランドアイデンティティのギャップを埋めるための重要な手段であることがわかります。(詳細はこちらから)

 

ブランドギャップを発見するユーザーインタビュー

ユーザーインタビューは、ブランドギャップを発見するための効果的な手段となります。ユーザーインタビューを実施する主なターゲットは、ブランドオーナー、従業員、そしてクライアントの3つです。

ブランドオーナーのインタビュー

ブランドオーナーは企業のブランドビジョンを形成し、それを具現化する役割を果たします。ブランドオーナーのインタビューにより、企業のブランドアイデンティティ（企業が自身のブランドをどう捉えているか）を理解することができます。

従業員のインタビュー

従業員は企業のブランドを日々の業務を通じて体現するものであり、ブランドのフロントラインであると言えます。従業員のインタビューにより、企業のブランドがどのように運用され、その結果、顧客とどのような関係が築かれているのかを理解することができます。

クライアントのインタビュー

最終的にブランドを評価するのはクライアント、つまり製品やサービスを実際に利用する顧客です。クライアントのインタビューにより、企業のブランドがどのように受け止められ、どのような評価をされているのか、つまりブランドイメージを把握することができます。

 

ユーザーインタビューとブランド戦略の結びつき

ユーザーインタビューは、ブランド戦略の立案において非常に重要な役割を果たします。ユーザーからの直接的な意見を通じて、企業は自社のブランドがどのように受け止められ、どのように評価されているのかを理解することができます。そしてその情報を基に、ブランドギャップを減らし、より良いブランド体験を提供するための具体的な戦略を立案することができます。

また、ユーザーインタビューは、顧客との深い関係性を築くための重要な手段とも言えます。顧客から直接話を聞くことで、企業は顧客のニーズや期待をより深く理解し、それに対応するためのサービスや製品を提供することが可能となります。これは、企業のブランド価値を向上させ、顧客ロイヤルティを高めるための重要な要素となります。

以上から、ユーザーインタビューは、ブランド戦略を効果的に立案し、実行するための強力な手段であると言えます。それはブランドとユーザーとの間のギャップを明らかにし、それを減らすための道筋を示すものです。企業はこのユーザーインタビューを通じて、顧客中心のブランド戦略を構築し、その実行によりブランド価値を向上させ、企業の成長を達成することができるようになると考えています。