子どもと一緒に考える、モノの価値
こんにちは。ディレクターの今泉です。私ごとですが、今年の4月から娘が小学1年生になりました。最近、親子の会話で増えてきているのが「モノのねだん」についてです。例えば、近くのコンビニに行ってジュースを買うとき、娘は私にこんなことを尋ねてきます。
「どうしてローソンのジュースは、150円なの?たかい?やすい?」
また週末に、コメダ珈琲店さんへ休憩で立ち寄った際には、
「ローソンのオレンジジュースは150円なのに、どうしてここでは620円するの?」
まっすぐな瞳で娘が尋ねてきた時、私は「さぁ、また来たぞ」と身構えます。4月にランドセルを背負った頃から理解力がぐんと高くなったため、ある程度まとまった回答をしてもいい関係になってきました。
価格はどのようにして決まる?
先ほどの疑問、ジュースの値段について。たしかに、商品を比べた時に高いか安いかという判断は、人それぞれ意見がありそうです。着眼点としてはとても良いと思うので、2つのポイントを押さえて説明します。
- 中身を含めて、商品になるまでの経費のかけ方がそれぞれ違う
- 一見同じように見えたとしても、質や価値の違いがある
1の経費のかけ方がそれぞれ違うことに関しては、小学1年生に対して「コストの掛け方が違うからです」で終わることはできませんので、いちいち具体的にしなくてはいけません。コンビニで購入するジュースは消費者が手にする過程で、多くの工数が必要です。果物の原材料、加工代、容器、パッケージデザイン費など。
「商品をお店に運んでもらう配達員さんだって必要だし、お店ではレジをする人もいるね。」
最終的にできあがった商品だけではなく、見えないところにもお金が必要と話しました。
サービスを利用して得られる良い体験
2の価値の違いについては「体験」、つまりデザインの現場にとっても大切なUXをベースに会話します。
「どうしてコメダのは、値段が高いの?」
「コメダのジュースは、可愛い長靴のグラスに入れて出してくれるからね。それに、お店でゆっくりできるでしょう。」
コメダ珈琲店さんは、お客さまがゆったり過ごせるように、木材とレンガを組み合わせた温かみのある内装に仕上げられています。私が住む地域に新しくオープンした店舗は、まだ木調が明るく若々しい印象を与えてくれます。その空間に点在する赤いソファーは座り心地もやわらか。子ども的には、絵本の中に出てくる森のおうちに似ているそうで、とても気に入っているようです。
「あの長ぐつのコップもいいんだけど、あの赤いソファーが大すきなの。」
「そうだったんだね、また来ようね。」
ミニマムデザインにおける価値とは
UXについては、私たちにご依頼いただいている制作物においても重要なテーマとして意識しています。
満足できるUX=体験は、その時に受けた瞬間的な印象だけでなく、その後に思い出したり何度もリピートできるなど、その人に寄り添って良い体験が続いていきます。先ほどのコメダ珈琲店さんでも「また行こう。週末までまたがんばろう。」と、いつ訪れても安心感があることや、親子で心の充電ができるという点で価値を感じています。
価値と価格について、制作現場の中で挙げた際に比較的分かりやすいのは、企業のロゴマークや商品のブランドネームでしょうか。他の制作物であるWebサイトやパンフレット、スチール撮影等と最終的なアウトプットの量だけを単純に比較してしまうと、かなりミニマム(最小限)になると思います。ロゴマークにおける私たちなりの価値提供は、なにか。パッと開示できることは以下です。
- ロゴマーク類は、企業や商品の考えを一目で表現している
- 長く使用できるものを提供するためにクオリティを追求する
ロゴマークやブランドネームは、他のサービスと区別する役割を担っています。消費者に伝えたいことは何かをユーザーの脳に一瞬で焼きつけるためにはデザインに着手する前にコンセプトが必要で、まずその策定を行います。
人の脳は、一度に処理できる情報量が限られていますので、多くの情報からインプットしてもらうためには、表面的な意匠だけではなく根幹的なコンセプトが必要となるのです。
2つめの「長く使える」というポイントは、ロゴマーク制作における基本姿勢です。直感的には理解しにくいかもしれませんが、いいデザインのお洋服は長く着られたり、機能的で素敵な家具だったら引っ越ししてもずっと愛用していけることと同じです。
ロゴマークの重要性とその機能
企業にとって、会社の標章を新しく作るという行為は非常に限られています。コーポレートアイデンティティの中心となり、Webサイトや名刺、封筒などに利用され、作業着や看板、ノベルティなどの立体物にも利用されることもあります。長くお付き合いするものだから、しっかりした意匠設計が必要です。
長期間使用できることを前提にデザインを作るとなると、精度=クオリティが求められます。緻密な計算と磨きをかけていないと、時間が経過した際に細かい箇所で「ほころび」が生じます。企業のロゴマークの場合は最低でも10年、商品のロゴマークは最低5年という、気持ちとしては保証書をつけて納品するくらいの気概をもって制作しています。ブランドを育てていく観点で私たちは向き合っているので、短期間で消費されていく一過性のデザインは提供していないつもりです。
先日、ある大切なお客さまが来福された会食の席で、弊社の代表はこんなことを言っていました。
「考えずに作って納品して、責任を持たないお仕事をするとやり直しが発生する。新たなご依頼をいただいて受注をどんどん増やしていくと、ボク達的には商売的な”儲かる仕組み”ができあがるのかもしれないですね。」
お客さまにこんなことを堂々と言ってしまう代表に驚いてしまいましたが、朝礼のようないつものトーンで話していました。言葉をかえせば、短期間でやり直しを続ける形で儲けていく仕組みは好んでいない、安直に作らない、という意味になります。
ロゴマークがもつ機能をまとめた記事がSwingsにありますので、私たちのクリエイティブポリシーと合わせてぜひご一読ください。
14年ぶりに自社のロゴマークをリデザインした話 | Swings
また、ブランコのロゴマークが一新されたのは、2020年5月15日のことです。
ロゴマーク変更及びリブランディングのお知らせ | Bulanco Inc.(ブランコ株式会社) | ブランディングファーム
「私たちブランコ株式会社は、創業以来14年間使用したロゴマークを、この度、変更およびリブランディングを行うことになりました。」
私は3年前にキャリア採用として仲間入りしましたが、ブランコも以前のロゴマークを14年間使っていたようです。
私たちは、公園の遊具にある「ブランコ」のような自由な発想で、さまざまな制作物を通して、企業様のサービスを世の中にお届けするお手伝いをしております。ぜひお気軽にご相談ください。小学1年生の子育てについても、ぜひご示唆や情報をお待ちしております。