「ホテルオークラ東京」の持つ日本の伝統美
8月31日に、建物老朽化による建て替えのため、ホテルオークラ東京の本館が惜しまれつつも閉館を迎えました。
日本を代表するホテル
ホテルオークラ東京は、モダニズム建築からポストモダン建築への過渡期である1962年に竣工され、当時の日本における最高の建築、工芸技術を集約すべくつくられた建物です。
「日本の美をもって諸外国の貴賓を迎えるホテルをつくりたい」という創業者の思いから生まれたこのホテルは、モダニズム建築と日本の工芸技術から織りなされ、創業以降52年にわたり、歴代のアメリカ大統領をはじめとする数々の賓客を迎えてきました。
海外からも「日本モダニズムの傑作」と評価が高く、世界中から取り壊しを惜しむ声が数多く寄せられました。
最高の建築
ラグジュアリー・ブランドのBOTTEGA VENETAでは、2014年11月からホテルオークラ東京を称えるプロジェクト「TRIBUTE TO AN ARCHITECTURAL COLLABORATION」をスタート。
その中のひとつの取り組みとして、画像投稿サイトInstagramにてホテルオークラ東京の画像を共有するハッシュタグ「#MyMomentAtOkura」をつくり、参加を呼びかけました。そこには6000件近い投稿が集まっています。
日本のモダニズム建築のファンであり、当ホテルのリピーターでもあった、ボッテガ・ヴェネタのクリエイティブディレクター トーマス・マイヤーは、ホテルオークラ東京の魅力についてこう語っています。
「先見の明を持った創設者、才能ある若い建築家と職人、そして芸術家…。オークラから学ぶのは理想的なコラボレーションです。だからオークラは最高の建築なのです。」
随所に見られる日本の伝統美
そんな世界中から愛されるホテルオークラ東京の、魅力の一部をご紹介します。
建築家 谷口吉郎が設計した本館メインロビーは、”オークラ・ランタン”という愛称で親しまれている、古墳時代の首飾りを模した「切子玉形」の照明が柔らかな光を放ち、空間を贅沢に使って配置されたテーブルと椅子は、上から見ると梅の花のように見えます。
うねり流れる水岸に文人が並び、上流より流れてくる盃が自分の前を通りすぎないうちに子をつくり、盃をとって飲み干す、という平安時代に行われた“曲水の宴”という遊びがあります。その曲水の庭の趣を活かしつくられた屋上庭園が”曲水庭”です。
麻の葉は、形が大麻の葉を広げたように見えることから、名前がつきました。欄間通しや障子などの装飾に用いられる組子だけでなく、代表的な女柄のひとつとして着物でも浸透し、広く親しまれています。
麻の葉だけでなく、菱紋や、銀杏紋、鳥文などさまざまなモチーフの意匠がホテルの随所に施されていました。
生まれ変わる本館
古い建築物を修繕しながら使用し、伝統的な街並みが残るヨーロッパと相反して、地震の多い日本の建築は、古いものを壊して新しいものをつくることにあまり抵抗がないように感じます。
新本館は2019年に開業予定だそうですが、旧本館の良さを継承した、これまでのファンの期待を裏切らないものに生まれ変わって欲しいですね。
Hotel Okura Tokyo
現在別館のみ営業中
新本館は2019年開業予定