「ヨシタ手工業デザイン室」の商品から感じる作り手の思いと背景
すべて人の手工業でつくられた「ヨシタ手工業デザイン室」の美しい商品。
キッチングッズを中心に、手に触れることで感じる素材の美しさや、道具としての使いやすさを追求します。
“用の美”
東京都小金井市にあるデザイン室「ヨシタ手工業デザイン室」は、柳宗理デザインシリーズのキッチンツール、耐熱ガラスボールの製品デザインを担当していたプロダクトデザイナー吉田 守孝さんにより2011年に設立されました。
「手で触れ五感に感じることを大切にしたい」、「手を動かし道具や素材との対話から気づき着想したい」という思いから”手工業“と名づけられた「ヨシタ手工業デザイン室」。
その思いの通り吉田さんの商品は、人の生活や背景から生まれた使いやすくも美しい、現代のプロダクトにおいて「用の美」に触れることのできるプロダクトです。
なじむデザイン
吉田さんの商品はスタイリッシュでかっこいいだけでなく、使う人の生活や使用シーンが考えられたモノばかりです。
センヌキのデザインのための材料を探している際、金属加工の伝統がある新潟県燕市で、握った時の手になじむ柔らかいステンレス材に出会ったそうです。
それは、断面に角がない、丸棒をロール加工で押しつぶし板状に形成されたものでした。
そのステンレス材との出会いをきっかけに「ラウンドバーシリーズ」が誕生しました。
このシリーズはステンレスの持ち味と、燕の金属加工技術を活かすための曲線が美しいとてもシンプルな新しい形に仕上がっています。
「ステンレスのみのシンプルを極めたフォルム」は、工具のような無骨さの中に、作品としての美を感じられますね。
生活と背景
これまでの商品に、「くーわん」と「ふーわん」というお茶碗とお碗があります。
この商品には“こどもと一緒の暮らし”がテーマにあります。
見た目のデザインとしては、お茶碗とお碗それぞれに3つのサイズがあり、収納をコンパクトにしてくれる嬉しいポイントがあります。しかし、吉田さんは使用シーンを重要視しさらにデザインを加えます。
こどもの小さな手でも持てるよう下膨れのフォルムにし、指が触れる部分を少し削りみぞをつけるなど、日本の食文化を伝える教育を踏まえ、細部にまでこだわっています。
個人的には、この商品の「食事の習慣を通して私達が代々受け継いできたものを、自然と子どもたちに伝えたい」という背景がとても好きです。吉田さんの「使う人を思い、想像する姿」が浮かびますね。
素材を活かしているか、使いやすさを追求したシンプルな形か、生活になじむかどうかといった、あらゆる視点から洗礼され生み出される吉田さんの商品から目がはなせません。
ヨシタ手工業デザイン室
プロダクトデザイナー吉田 守孝さんによる、素材、手工業にこだわり生み出される商品