ありそうでなかった!タクシーに特化したZINE「Hey TAXI」 ありそうでなかった!タクシーに特化したZINE「Hey TAXI」
日本中の路上を無数に走っているタクシー。必要な時は必死に探すけれど、不要な時は特別気にも留めない、そんな人も多いはず。日常の風景の中に溶け込んでいる存在ながら、意外と知らないタクシーのこと。ある日タクシーに特化したZINEが存在していると知り、とても興味をそそられました。
その名も“Hey TAXI”!思わず声に出して言いたくなってしまうタイトルです。タクシーにまつわるどんな情報が載っているのか、一体どんな人がつくっているのか…。気になるあれこれをHey TAXI編集部の
木平 崇之さんに伺ってきました。
なぜタクシーなのか
ー「交通手段のひとつ」ーータクシーに対してはシンプルにそう考えている方が多くを占めそうですが、タクシーのZINEはどのようにして生まれたのでしょうか。
木平 都内にはこれでもかというくらいタクシーが走っています。夜になるとなおさらで、路上の9割はタクシーなんじゃないかと思うくらいです(笑)。それだけ利用している人が多いということですが、ほとんどの利用客にとってタクシーは「手を挙げて、来た車に乗るもの」で、ただの移動手段であり、それ以上でもそれ以下でもない、興味がないものなんだと思うんです。
でもある日よくよく注意して見てみたら、実に様々な種類の行灯(あんどん)があって、カラフルな車体も多い。一社一社に特徴があることに気づきました。逆にいうと、こんなにたくさんの種類のタクシーが走っているのに、なんで誰も見向きもしないんだろう?なんでこんなに興味がないんだろう?と、ふと疑問に思ったんです。
電車は運営会社によって車両デザインやカラーに特徴があり、それと共に「乗り鉄」や「撮り鉄」と呼ばれる愛好者も多くいますよね。これはタクシーにも当てはまるのではないかと思いました。タクシーを深掘りしたら面白いんじゃないかって。今は興味なくても、普段当たり前のように利用してる人はたくさんいて、きっかけさえ作れば、興味を持つようになるのでは…と。
ーふとした疑問から生まれたものだったんですね…!元々、車両やタクシーにすごく詳しいというわけではなかったんでしょうか。
木平 僕たちも元々タクシービギナーです(笑)。Hey TAXIは、同じ制作会社に所属していたデザイナーとコピーライターで作り始めたZINEなんです。制作当初、どうやってタクシーの魅力を引き出すかを考えた時に、自分たちの経験から、タクシーの運転手さんから聞いた話は妙に面白いということを思い出しました。そこで、運転手さんにその会社のことを聞いて、1社ごとに焦点を当てて深掘りしていこう、ということになりました。記事についてもその会社を褒めるような記事ばかりでなく、ニュートラルな目線を大切にしています。 よくよく調べていくと、世の中にはタクシー愛好者はいないわけではなく、むしろ僕たちよりも詳しい方がたくさんいます。でもこのHey TAXIは玄人向けのものではなく、タクシーに興味を持ってもらえる「きっかけ」として、号を増すごとに読者さんと一緒に知識を深めていけたらと思っています。
いいものを作るには作り手が楽しむこと
ー数ある中からZINEという表現方法を選ばれたのはなぜなのでしょうか。
木平 普段の仕事では、クライアントの意向を汲んで制作することが多く、もちろんそれもまたやりがいはあるのですが、一方でどうしても表現上の制限がかかってしまいます。ZINEは自費出版ですから、自分たちのフィルターを通して今やりたいこと、伝えたいことを、ある意味挑戦しながら制作することができるんです。 Hey TAXIは仕事ではなく完全に趣味の世界で制作しているものなので、スタッフが各々自由に、そしてタクシーの魅力をいかに伝えられるかを思案しながら楽しんで制作しています。
ー1000回乗っても乗れないレアな車両の存在や、運転手さんの前職、ある地点間のタクシー代金例を載せたマップなど、読者を置いてけぼりにしないような絶妙な情報が載っていて、2冊ともあっという間に読んでしまいました。現在発行されている第1号、第2号では、別のZINEかと思うほど切り口や表現方法がまったく違いますよね。
木平 これまでに発行した号は、毎号ディレクター、ライター、イラストレーターを変えて作っています。理由は大きく分けて2つあるんですが、1つ目は作り方がマンネリ化しないようにするためです。
木平 1人がトップダウンですべて決めて作っていくやり方は統一感もあり、ぶれないものができる可能性が上がりますが、そのやり方がルーティーン化していくと新しいものが作りにくくなるのではないかと思うんです。「仕事」において「効率」はとても大切で、効率よく進行しお金に還元していく必要があるので、前者のやり方もいいと思いますが、Hey TAXIでは効率が悪くてもなるべく新しい気持ちで新しいものを作りたいと思い、現在の方法を採用しています。そういう意味でもZINEという媒体がしっくりきていますね。
もう1つは、自分たち「制作者側のモチベーション維持」が大きいです。なるべく参加する人たちが「やらされている」状態にならないよう、途中参加の人も含め全員で楽しんで作りたいと思っています。自分の裁量が大きいと責任感もありますが、やる気も出ますよね。ちょうど今挑戦したい表現があるのならそれを取り入れてもらっても良いですし、それがその人のモチベーションにもつながる。いいものを作るには、やはり作り手が楽しむことがとても大事だと思っています。 ただ、毎号全ての要素を変えてしまうと完全な別物になってしまうので、「タクシー運転手に聞いた話をまとめる」スタイルの他にも、表紙は行灯のイラストにすることや、「Hey TAXI」のロゴをぱっと見で見える位置に入れることなど、ある程度は統一感を持たせるように気を配っています。本の体裁はその号の中心になる人に自由に決めてもらっています。
タクシーの魅力は“楽しい個性”
ータクシーの持つ魅力は、どのようなものだと思いますか?
木平 1つは見て楽しい個性。会社ごとに違う車体のカラーや行灯は、デザイン目線で見てとても面白いです。
あとはやはり運転手さんとの距離です。普段使う電車やバスに比べて、タクシーは運転手さんとの距離が圧倒的に近いんですよね。あの狭い空間の中で、赤の他人と一対一のコミュニケーションが成立する、というところがとても不思議で面白いです。もちろん、人同士なので合う合わないはありますが…(笑)。
ー確かに、タクシーの中では赤の他人同士のコミュニケーションも不思議と成り立っていますね。Hey TAXIを通して1番伝えたいこと、表現したいことはなんですか?
木平 やはり一番はタクシーならではの面白さ、魅力を伝えることで、普段気にもとめていなかったタクシーに、興味を持つ人が少しでも増えたらいいなと考えています。今は都内の各タクシー会社を中心に特集を組んでいますが、日本中にはたくさんのタクシー会社があるので、 ゆくゆくは地方のタクシー会社も取り上げていきたいと思っています。
また余談ですが、今ジャパンタクシー(東京オリンピックに向けて導入されている車両)が増えてきています。ジャパンタクシーは基本全車黒塗りで行灯だけ各社異なる仕様です。それは統一感がでる一方で各社の個性が出にくくなってしまい、少しさみしさを感じています。ジャパンタクシーが更に増え、従来のタクシーを見る機会が減ってしまう前に、今の個性的な車両の魅力を伝えていきたいですね。
創刊号は“初乗り料金”
毎号作り手や表現の仕方を変えていたり、創刊号は東京でのタクシーの初乗り料金と同じ410円に設定しているなど、遊び心が満載な
Hey TAXI。ZINEという表現方法を選択したことで、より自由にタクシーの魅力を伝えています。
現在は第3号を鋭意制作中とのこと。次は一体どんな切り口でタクシーの魅力を伝えてくれるのでしょうか。福岡のパンダタクシーやラッキータクシーもぜひ深堀りしてほしい…!
現在、福岡では六本松蔦屋書店にてお取り扱いがあるそうです。公式オンラインショップからの購入も可能。気になった方は、仕掛け満載のZINEをぜひ実際に手に取ってみてくださいね。
Hey TAXI
創刊号 「東京無線」 410円
第2号「チェッカーキャブ」 890円
Instagram @heytaxi_magazine
日本中の路上を無数に走っているタクシー。必要な時は必死に探すけれど、不要な時は特別気にも留めない、そんな人も多いはず。日常の風景の中に溶け込んでいる存在ながら、意外と知らないタクシーのこと。ある日タクシーに特化したZINEが存在していると知り、とても興味をそそられました。
その名も“Hey TAXI”!思わず声に出して言いたくなってしまうタイトルです。タクシーにまつわるどんな情報が載っているのか、一体どんな人がつくっているのか…。気になるあれこれをHey TAXI編集部の木平 崇之さんに伺ってきました。
なぜタクシーなのか
ー「交通手段のひとつ」ーータクシーに対してはシンプルにそう考えている方が多くを占めそうですが、タクシーのZINEはどのようにして生まれたのでしょうか。
木平 都内にはこれでもかというくらいタクシーが走っています。夜になるとなおさらで、路上の9割はタクシーなんじゃないかと思うくらいです(笑)。それだけ利用している人が多いということですが、ほとんどの利用客にとってタクシーは「手を挙げて、来た車に乗るもの」で、ただの移動手段であり、それ以上でもそれ以下でもない、興味がないものなんだと思うんです。
でもある日よくよく注意して見てみたら、実に様々な種類の行灯(あんどん)があって、カラフルな車体も多い。一社一社に特徴があることに気づきました。逆にいうと、こんなにたくさんの種類のタクシーが走っているのに、なんで誰も見向きもしないんだろう?なんでこんなに興味がないんだろう?と、ふと疑問に思ったんです。
電車は運営会社によって車両デザインやカラーに特徴があり、それと共に「乗り鉄」や「撮り鉄」と呼ばれる愛好者も多くいますよね。これはタクシーにも当てはまるのではないかと思いました。タクシーを深掘りしたら面白いんじゃないかって。今は興味なくても、普段当たり前のように利用してる人はたくさんいて、きっかけさえ作れば、興味を持つようになるのでは…と。
ーふとした疑問から生まれたものだったんですね…!元々、車両やタクシーにすごく詳しいというわけではなかったんでしょうか。
木平 僕たちも元々タクシービギナーです(笑)。Hey TAXIは、同じ制作会社に所属していたデザイナーとコピーライターで作り始めたZINEなんです。制作当初、どうやってタクシーの魅力を引き出すかを考えた時に、自分たちの経験から、タクシーの運転手さんから聞いた話は妙に面白いということを思い出しました。そこで、運転手さんにその会社のことを聞いて、1社ごとに焦点を当てて深掘りしていこう、ということになりました。記事についてもその会社を褒めるような記事ばかりでなく、ニュートラルな目線を大切にしています。 よくよく調べていくと、世の中にはタクシー愛好者はいないわけではなく、むしろ僕たちよりも詳しい方がたくさんいます。でもこのHey TAXIは玄人向けのものではなく、タクシーに興味を持ってもらえる「きっかけ」として、号を増すごとに読者さんと一緒に知識を深めていけたらと思っています。
いいものを作るには作り手が楽しむこと
ー数ある中からZINEという表現方法を選ばれたのはなぜなのでしょうか。
木平 普段の仕事では、クライアントの意向を汲んで制作することが多く、もちろんそれもまたやりがいはあるのですが、一方でどうしても表現上の制限がかかってしまいます。ZINEは自費出版ですから、自分たちのフィルターを通して今やりたいこと、伝えたいことを、ある意味挑戦しながら制作することができるんです。 Hey TAXIは仕事ではなく完全に趣味の世界で制作しているものなので、スタッフが各々自由に、そしてタクシーの魅力をいかに伝えられるかを思案しながら楽しんで制作しています。 ー1000回乗っても乗れないレアな車両の存在や、運転手さんの前職、ある地点間のタクシー代金例を載せたマップなど、読者を置いてけぼりにしないような絶妙な情報が載っていて、2冊ともあっという間に読んでしまいました。現在発行されている第1号、第2号では、別のZINEかと思うほど切り口や表現方法がまったく違いますよね。
木平 これまでに発行した号は、毎号ディレクター、ライター、イラストレーターを変えて作っています。理由は大きく分けて2つあるんですが、1つ目は作り方がマンネリ化しないようにするためです。 第一号 ロゴ、表紙デザイン:木平崇之/デザイン:井上桃子/イラスト:川口丈晴/写真:井上桃子 木平 1人がトップダウンですべて決めて作っていくやり方は統一感もあり、ぶれないものができる可能性が上がりますが、そのやり方がルーティーン化していくと新しいものが作りにくくなるのではないかと思うんです。「仕事」において「効率」はとても大切で、効率よく進行しお金に還元していく必要があるので、前者のやり方もいいと思いますが、Hey taxiでは効率が悪くてもなるべく新しい気持ちで新しいものを作りたいと思い、現在の方法を採用しています。そういう意味でもZINEという媒体がしっくりきていますね。
もう1つは、自分たち「制作者側のモチベーション維持」が大きいです。なるべく参加する人たちが「やらされている」状態にならないよう、途中参加の人も含め全員で楽しんで作りたいと思っています。自分の裁量が大きいと責任感もありますが、やる気も出ますよね。ちょうど今挑戦したい表現があるのならそれを取り入れてもらっても良いですし、それがその人のモチベーションにもつながる。いいものを作るには、やはり作り手が楽しむことがとても大事だと思っています。 ただ、毎号全ての要素を変えてしまうと完全な別物になってしまうので、「タクシー運転手に聞いた話をまとめる」スタイルの他にも、表紙は行灯のイラストにすることや、「Hey taxi」のロゴをぱっと見で見える位置に入れることなど、ある程度は統一感を持たせるように気を配っています。本の体裁はその号の中心になる人に自由に決めてもらっています。
第二号 デザイン:木平崇之/イラスト:木佐貫愛/写真:井上桃子/テキスト:長谷川哲士/製本:若松くるみ
タクシーの魅力は“楽しい個性”
ータクシーの持つ魅力は、どのようなものだと思いますか?
木平 1つは見て楽しい個性。会社ごとに違う車体のカラーや行灯は、デザイン目線で見てとても面白いです。
あとはやはり運転手さんとの距離です。普段使う電車やバスに比べて、タクシーは運転手さんとの距離が圧倒的に近いんですよね。あの狭い空間の中で、赤の他人と一対一のコミュニケーションが成立する、というところがとても不思議で面白いです。もちろん、人同士なので合う合わないはありますが…(笑)。
ー確かに、タクシーの中では赤の他人同士のコミュニケーションも不思議と成り立っていますね。Hey TAXIを通して1番伝えたいこと、表現したいことはなんですか?
木平 やはり一番はタクシーならではの面白さ、魅力を伝えることで、普段気にもとめていなかったタクシーに、興味を持つ人が少しでも増えたらいいなと考えています。今は都内の各タクシー会社を中心に特集を組んでいますが、日本中にはたくさんのタクシー会社があるので、 ゆくゆくは地方のタクシー会社も取り上げていきたいと思っています。
また余談ですが、今ジャパンタクシー(東京オリンピックに向けて導入されている車両)が増えてきています。ジャパンタクシーは基本全車黒塗りで行灯だけ各社異なる仕様です。それは統一感がでる一方で各社の個性が出にくくなってしまい、少しさみしさを感じています。ジャパンタクシーが更に増え、従来のタクシーを見る機会が減ってしまう前に、今の個性的な車両の魅力を伝えていきたいですね。
創刊号は“初乗り料金”
毎号作り手や表現の仕方を変えていたり、創刊号は東京でのタクシーの初乗り料金と同じ410円に設定しているなど、遊び心が満載なHey TAXI。ZINEという表現方法を選択したことで、より自由にタクシーの魅力を伝えています。
現在は第3号を鋭意制作中とのこと。次は一体どんな切り口でタクシーの魅力を伝えてくれるのでしょうか。福岡のパンダタクシーやラッキータクシーもぜひ深堀りしてほしい…!
現在、福岡では六本松蔦屋書店にてお取り扱いがあるそうです。公式オンラインショップからの購入も可能。気になった方は、仕掛け満載のZINEをぜひ実際に手に取ってみてくださいね。
Hey TAXI
創刊号 「東京無線」 410円
第2号「チェッカーキャブ」 890円
Instagram @heytaxi_magazine
https://heytaxish0p.thebase.in/