太宰府天満宮の新たな“庭” ピエール・ユイグによる「ソトタマシイ」


人々が行き交い集う場所としての「開放性」、1100年以上も変わらぬ天神信仰の場としての「固有性」という2つのキーワードをテーマに、さまざまな分野の第一線で活躍するアーティストを招き、2006年より開催されている「太宰府天満宮アートプログラム」。

その記念すべき第10回目を飾るのは、フランス人アーティストピエール・ユイグさんによる新たな“庭”-「ソトタマシイ」。パーマメント作品として、5月6日(日)までは天候の良い土日の数時間のみ、それ以降は予約の方に公開、という秘密めいたその“庭”をのぞいてきました。


 

神秘的な空間

太宰府天満宮の本殿の奥、茶屋の連なる広場を抜け、脇道にある角度の急な階段をのぼった先にその“庭”はあります。

春めいた陽気で梅や桜にあふれた太宰府天満宮は多くの人で賑わっていましたが、階段をのぼりきると、そこに広がるのは凛とした空気が流れる神秘的な空間でした。


©Pierre Huyghe Photo by Kei Maeda

頭部に本物の蜂の巣があしらわれたコンクリートの女性の彫像、その周りを飛び交う蜂。彫像の後ろには1本の梅の木、少し離れた場所には黄色い実をつけた橙の木が。

地面を切り取ったような四角い池には睡蓮、そして運が良ければその姿を見ることができる2匹のウーパールーパー。

一見どんな意味があるのかと首を傾げてしまうようなものたちが絶妙に配され、不思議と神聖な気持ちになりました。

テーマは「永遠の庭」

そこにあるのはひとつの生態系、でした。

この“庭”を手がけたのはフランスの現代美術家、ピエール・ユイグさん。世界各地の美術展やミュージアムでビデオ作品やインスタレーション作品を発表してきた、いま注目されている美術家の一人です。

千百年以上も続く太宰府天満宮の歴史に想像をめぐらせつくられ、ユイグさんにとって初の恒久作品となる今回のテーマは「永遠の庭」。2012年に自身が発表したプロジェクトでも取り組んだ、自然と人為の関係性への考察を背景としてつくれられています。



©Pierre Huyghe Photo by Kei Maeda

太宰府天満宮の象徴にもなっている「飛梅」の穂木を接ぎ木した梅の木や、“代々続く”という意味を持つ橙、池に浮かぶのはモネの絵に描かれた池から株分けされた睡蓮、そして幼生成熟といわれる子どもの姿のまま代替わりをしていくウーパールーパー。

無作為に選ばれたような“庭”を構成するひとつひとつの要素は、どれも象徴的で“命のつながり”を感じるものばかり。

庭を自由に行き交う蜂たちは梅や橙の花の蜜を集め、彫像の頭部の蜂の巣はどんどん形を変え、池の蓮もいつかは花が全体を埋め尽くし、いまは姿を見つけるのが困難なウーパールーパーも、あちこちで泳いでいるかもしれません。人為的につくられた“庭”でありながら、その時々で表情を変え、長い年月の中でうつろい続けていくのです。

命をつなぐ強さ

変わらず永く存在し続ける神社、という場所であるからこそ生まれた「永遠の庭」。神秘的でありながら、本能的に粛々と生命をつなぐ、自然の強さも感じる展示でした。 

宝物展企画展示室では、“庭”の発想の源となった資料や、ユイグさんによるプラン、ドローイングやスケッチが5月6日(日)まで展示されています。発想が形になるまでの経緯を知ることで、“庭”についてより深く味わえそうです。


お出かけの気持ち良いこの季節に、アートに触れる機会をぜひ取り入れてみてくださいね。