鋭さとユーモアでメディアを揶揄する、村上周個展「ALTERNATIVE MEDIA」


アーティスト活動の傍ら、プロダクトブランド「amabro」の監修や、東京・中目黒にあるライフスタイルセレクトショップ「BRICK & MORTAR」、ベビーギフトのセレクトショップ「GIVING STORE」のプロデュースなど、多方面で活躍されている村上 周(あまね)さんをご存知でしょうか。



目に映る街や風景をオブジェクトとして置き換え、独特なパースやスケール感を表現するアーティストとして、これまでもアブストラクトや、写真にコラージュを施したものなど、さまざまな作品を発表してきました。



事実×ユーモア

そんな村上さんが近年製作に取り組んでいるのは、古い新聞にアートワークを施した作品シリーズ「ALTERNATIVE MEDIA」。

アポロ月面着陸やジョン・F・ケネディ暗殺など、歴史的な ニュースや事件が掲載された新聞や雑誌の紙面に、ウィットに富んだ“一言”がオーバーペイントされています。

ジョークとも取れ、核心をついているようでもあるその“一言”は、ユーモアをまといながら、情報操作や隠蔽といった行為が度々取り沙汰されるメディアへの揶揄も含んでいます。

“アイロニーアート”

土台となる紙面に書かれているニュースや人物、それにまつわるエピソードを掘り下げ、どんな“一言”をのせるのかを決めつくられた作品たち。

「これは“アイロニーアート”なんです。」と村上さんは言います。

例えば、アポロ月面着陸についてのニュースが一面に取り上げられた紙面にペイントされているのは、映画監督の巨匠「スタンリー・キューブリック」の名前。

人類が初めて月面着陸をしたアポロ11号の映像について、映画監督スタンリー・キューブリックはドキュメンタリー番組でこんな告白をしました。「CIAの所有するスタジオで私が撮影した」と。しかしそのドキュメンタリーの放映日はエイプリルフール。真偽はいまも謎に包まれたままです。

看板職人のフォント

ハンドペイントで描かれているフォントにもこだわりが。かつてアメリカで看板職人が使用していたフォントを使用して描かれています。

店の看板や街頭広告、ショーウィンドウに描かれる文字のすべてが看板職人によって描かれていた時代。彼らは言われるままに指定の文字を描くのが仕事でした。そんな彼らが描く文字に意味を込めたらどうなるか…?そこから着想を得て生まれた作品たちは、“文字を描く”という行為自体にも意味を持たせています。

センスとロジカルの絶妙なバランス

「SNSやインターネットの発達により誰もがメディアになりうる時代。

テレビや新聞といった一般的な“メディア”以外に、いつも寝る前にスマホでみるのが日課になっているようなニュースサイトや誰かのブログ、それがあなたにとっての“ALTERNATIVE MEDIA”です。」と村上さんはお話ししてくれました。

センスとロジカルの絶妙なバランスで成り立つ作品たちは、アーティストであり、グラフィックデザイナーであり、経営者という、さまざまな視点を持った村上さんならでは。

そんな村上さんの作品を味わう個展「ALTERNATIVE MEDIA」が、白金のHIGHTIDE STOREにて4月15日(日)まで開催中。

ハンドペイントの作品は実際に販売もされているほか、シルクスクリーンプリントのポスターや、村上さんの手がけるamabroの商品たちも一緒に展開されています。

会期は残りわずかとなりますが、この機会にぜひ見に行ってみてくださいね。

Related Posts