福岡発!花を使った新しいアート、体に纏う「花衣」

生け花やブーケなど、花を使った芸術作品は世の中にたくさんありますが、衣服を着せるかのように、女性の体に花を生ける「花衣」という技術があります。

今回は、体を花で装飾する、花を纏う、といったコンセプトのもとで多くの作品を手がけている「花衣」の考案者であり、フラワーアーティストの今井 陽月さんに、これまでの活動についてや花に対する思いなど、詳しいお話を伺いました。

花衣とは?

―「花衣」はどのような体制で活動し、どのようなパフォーマンスなんですか?

今井 現在は、2013年に福岡で設立した「LUNA SOLEIL(ルナ ソレイユ)」のほかに、今年新たに東京で設立した「LUNA Fleuge(ルナ フルージュ)」の二つの団体で活動しています。花を体に纏うことをテーマにした「花衣」という新しい装飾技術を使い、新しい花の形を作り出しています。

少しずつですが、組織的な動きが増えてきました。

model:yuuko, flower art:今井陽月,photograph:今井陽月

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―「ルナ ソレイユ」の名称の由来は何ですか?

今井 フランス語で「ルナ」が「月」で「ソレイユ」が「太陽」。花を生ける仕事を始めようと思った時に、自分のアーティスト名の「陽月」もそこから取りました。

―ところで、元々はアーティストではなくカメラマンだったんですよね。

今井 昔から写真が好きで、九州から上京して東京工芸大学で写真を専攻しました。当時は写真の研究職に就きたいと思っていて、東京都写真美術館でアルバイトもしていましたが、結局大学院には進まず、大学を卒業してから2年間ぐらい、美術的なことや舞台に関することを学べる環境として、渋谷にある東急文化村の美術館と今はもうなくなってしまった新宿コマ劇場で、掛け持ちで働いていました。

その間に銀座のギャラリーで自分が撮った写真を展示する機会にも恵まれ、一段落した感じもあったので、東京から九州に帰って来ました。

でも、なかなかカメラマンとしての仕事もなくて、とりあえず何か仕事をしなければならい状況だったので、なんとなく自宅近所の花屋さんで働き始めました。そこで花に対して興味を持つようになりました。個人的に写真も撮り続けていましたし、花と写真へのそれぞれの興味がだんだん合わさるようになった感じですね。

model:yuuko, flower art:今井陽月, photograph:中島洸一, assistant:野田眞直, Hair make:Emi Gokyu

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―そうだったんですね。花屋で生け花の修行をされたということですか?

今井 そうですね。仕事中の空いている時間にブーケを作る練習をさせてもらったりもありましたが、葬儀用のスタンドとか祭壇を作る仕事が多かったので、大きいものの作業から、空間的な形を表現する発想が生まれたんだと思います。

今のパフォーマンスに行き着く前は、花の冠を被ったりブーケを持った女性を撮影していました。だんたんと、自然な流れで、体に花を生けるようになっていった感じですね。あとは動くものに花を付けたら「咲く」とか「伸びる」とか、そういうイメージの写真が撮れるかもしれないって思いました。

model:yayo, flower art:今井陽月, photograph:今井陽月, make:塩満美朝(Hollywood AIR Fukuoka)

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福岡から、東京・大阪へ

―最近は福岡にとどまらず、東京・大阪などでの活動も増えているようですね。

今井 これから「花衣」をもっと全国的にしていくために、各地にポイントを作っているんですよ。東京や大阪で割とネームバリューのある協力者を増やして、九州や中国地方には題材として写真映えするロケ地が多いので、東京や大阪で自分自身のパフォーマンスや写真をアピールしながら、彼らをこっちに引っ張り出して一緒に活動していくことを考えています。

―東京・大阪と福岡の違いなど、何か感じていることはありますか?

今井 何か作品を撮ろうと思った時、東京では強いプロ意識や“プロフェッショナルとは何か”みたいなことをすごく教えられたんですよ。お金を払ってもらう意味とか。また大阪ではプロとアマの垣根をあまり感じないと言うか、一つの作品撮りが直接大きな仕事につながっていくようなケースが多くて、モデルもカメラマンも命かけていますよね。

福岡ではそういう感じが少ないように思っていて、物足りなさを感じています。もちろん、九州にも素晴らしいアーティストがたくさんいらっしゃって、いい影響を受けています。愉快な人たちばかりで、皆でくだらない話ばかりしていますけれど。(笑)

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―東京・大阪に比べて福岡は「ぬるい」などと言われることもあるようですが、その辺りはどうお考えですか?

今井 福岡が「ぬるい」って感じることもあるかとは思いますが、それはそれでいいような気がします。自分にとっては、東京や大阪で命かけている人たちを見て、ダメな自分に気づけて、そういう思いをこの地で存分に活かすことができます。

過ごしやすく、住みたい都市っていうような括りで言えば、例えば瀬戸内海辺りではアートと街の融合で成功している所もありますよね。福岡と比べてどう違うんだろうって思って、広島とかの中国地方にも興味を持って、実際に足を運んで活動して来ました。

―最近は情報格差がなくなったと言われていますが、感覚的なものはその場に行かないと分からないですよね。

今井 そうですね。ものを作り出しているのは、行政がどうだとか取り組みがどうだとかっていう話ではなくて、その土地に住んでいる人間ですから、各地で色んな人に会うことを大事に思っています。営業的な側面ももちろんありましたが、色んな人にあって色んな話をして、色んなものを見ようという意味で、ここ1年間は積極的に東京や大阪にいるようにしていました。

生きている意味、行動している意味

―拠点はあくまでも福岡で、ここから全国に活動場所を広げていくということですね。

今井 最近は「今井さんはいつもどこにいるの?」と言われることがすごく多くなって、ちゃんと拠点を決めようと思いました。軸はやっぱり福岡ですね。

model:yuzuki Aizawa, flower art(花衣):今井陽月, flower art(空間):JOCA, photograph:中島洸一, Hair make:SAYA

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東京や大阪などでパフォーマンスをすると雰囲気が「熱い」と言うか、やっていて率直に気持ちがいいんですよね。福岡と比べる訳ではないんですが、関西圏のカメラマンって気持ちを込めてちゃんとしている印象があります。作品に関わる皆が高いクオリティを求めていますよね。

東京でそういう経験をすると、例えば1年前の自分自身の作品を見たら「これはないな」って思っちゃいます。1年前の自分に腹が立つと言うか。逆にパッションっていう部分で言えば「この感覚、好き。またこの感覚でやりたい」とか「あの時の感覚でやろう」って思うこともよくあります。過去のパッションを呼び戻すような感じで。

全てにおいて意味を持たせることを意識しています。生きている意味とか行動している意味。だから惰性とかってあまり好きじゃないんです。東京や大阪に行っていた1年間は、先につながるようなものを求める意味合いが強くて、実際の仕事量を減らしたりもしていました。

職人でありたいという意識

―今後の展開はどのようにお考えですか?

今井 世の中の変化に応じて「花衣」も変化させたいと思っていますし、自分の根本的な考え方は、変化と言うより、今持っている技術を進化させていきたいということです。

自分はアーティストというよりは技術者、研究者、あるいは職人でありたいという意識が強くて、技術を提供する側の立場に立っていたいって思っています。技術だけではなく、花衣の花材においては、花自体の重さ、バランスの問題などがあって、花衣に向いている花、向いていない花があります。ただ花衣技術を向上させていって、向いていない花を安全に、重さを感じないように生けれるようにすることを考えています。

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花を生けるものとして、動物に生けて欲しいっていうような話があったりもします。今のところ人物以外には考えていませんが、女性に限定せずに男性にも花を生けたいと思っています。男性には「花」よりも「植物」を纏わせたいかなと。

この活動以外の部分でも、ネガティブに、自分は凡人だっていう意識を持ち続けていこうといつも思っています。対外的には天才を装っても、本当は全然そう思っていないし、だからこそ人よりも考えたり努力したりできる訳ですよね。

福岡でも東京でも、どこにいようとも、人よりもたくさん努力しようっていう姿勢は変わらないと思います。

―本日は熱い思いをお聞かせいただき、誠にありがとうございました!