老人たちの“記憶”を“記録”する「OLD MAN ARCHIVES」

だれかの語る言葉の中に、欲しかった答えが見つかることがあります。自分のことを話すだけではなくだれかの話を聞くこと、それはとても実りある行為です。それが何十年も歳を重ねた人生の先輩の“記憶”だとなおさら、かもしれません。

OLD MAN ARCHIBES」は、日常のふとした場面の中で出会う“人生の先輩”である老人たちの生きた語りを採集し、カセットテープという不可逆的な記録メディアに封じ込めるプロジェクトです。

どこかのだれかの“記憶”

引用元:OLD MAN ARCHIVES 公式サイト

引用元:OLD MAN ARCHIVES 公式サイト

“うまく生きるというか、うまく浮いておくというか。”

真っ白なカセットテープの中には、名前も顔も伏せた、どこかの或る老人の記憶を辿る独白が、日常のノイズとともに記録されています。

真冬の公園に佇んでいた人、山奥で木材業を営んでいる人、コンビニのイートインスペースでスポーツ新聞を読んでいた人、老舗喫茶店のマスター、はたまた現代アートのフィールドで活躍していた人。

偶然性を大切に、その場で出会った気になる老人に声をかけて行われる録音は、生の声にこだわり、その場の空気感をまるごと封じ込めています。

“記憶”に希少性と価値を

引用元:OLD MAN ARCHIVES 公式サイト

引用元:OLD MAN ARCHIVES 公式サイト

この“記憶”にフォーカスしたプロジェクトを手がけるのは、東京・世田谷にあるクリエイティブビジネスマネジメントカンパニー「Lifelong Kindergarten, Inc.」。

このプロジェクトで大切なことは、記録するという行為。どれだけの量を流通させるかということよりも、事実を流通させること自体に重きを置いているため、語り手の年齢の数しか生産されません。アルミパッケージに封入され、カバーに活版印刷を施したカセットテープは、パッと目を引くだけでなくついついコレクションしたくなるデザインです。生産数を限定し、魅力的なパッケージにすることで、“記憶”の希少性と価値を高めています。

醸造された“記憶”

“あれが一番悲しかった。いやぁ、これも人間なんだなぁなんてね。”

老人たちが語るのは、戦地での辛酸な記憶や、住んでいる土地の歴史、幼少期から現在までの経験など、さまざま。長い時間をかけ醸造されてきた記憶たちの記録は、現在5作品がリリースされています。

紡がれる言葉だけでなく、ノイズごとその情景を味わってみてはいかがでしょうか。

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