IDEOによる、ボストン市の開かれたリニューアルプロジェクト
マサチューセッツ州にある、アメリカでもっとも古い街のひとつである都市ボストン。
2016年7月に、ボストン市のWebサイト「BOSTON.GOV」がユーザーフレンドリーに重きをおいてリニューアルしました。
パイロット版を公開しユーザー(市民)からのフィードバックを募るなど、そのユニークなリニューアルプロセスもすべて公開されています。
混乱をまねく旧サイト設計
不動産税の支払い、駐車券の支払い、証明書の発行、リサイクルスケジュールのチェックなど、あらゆる用事でボストン市のサイトにアクセスする人の数は、毎年700万人を超えます。
ボストン市には50もの部門が存在し、それぞれが独自のマクロサイト、ナビゲーションおよびコンテンツの基準を持っていたこと、コンテンツ同士の関連性やユーザーの求める情報などに関係なく、それらが無理やりひとつのサイトの中にまとめられていたことなどから、サイトを訪れるユーザーを混乱させてしまっているという問題がありました。
そこでボストン市が立ち上げたのが「Boston.gov Redesign Project」。世界的なデザインファームIDEOをデザインパートナーに迎え、直感的に使える美しいWebサイトへのリニューアルに着手しました。
IDEOのデザイン思考
プロトタイピングとフィードバックを繰り返し、完成へと近づけていくIDEOのデザイン思考にのっとり進められた本プロジェクト。
ステイクホルダーとなる、ボストン市庁舎で働くスタッフや市民と協力をして、ユーザーが何を必要としているのかを観察し、11ヶ月に及ぶ準備期間の後、パイロット版のWebサイトを公開。メールでのフィードバックを呼びかけました。
リニューアルされたWebサイトは、部門ごとの情報ではなく、「ビジネスを始めるには」「都市で車を持つには」「冬がやってくる」などといった市民の生活のシーンに寄り添ったトピック別に整理され、直感的に知りたい情報にたどり着けるよう、シンプルで見やすいデザインになりました。
リニューアルしたのはWebサイトだけではありません。サイトをリデザインする過程で、ボストンの特徴を強調するビジュアルアイデンティティもつくりだしました。
デザインの一貫性を保つため、カラーパレットやロゴマーク、タイポグラフィなどについて記載した「ブランドガイドライン」を作成し公開しています。
ブランドガイドラインによると、例えば新しくデザインされたロゴマークは、親しみやすさわかりやすさを演出する太字の「B」と、ボストン市内の道に描かれそれをたどれば市内の16ヶ所の名所を巡ることができる赤い線「Freedom Trail」をイメージした赤いアンダーバーにより、“ボストンそのもの”を表しているそうです。
プロトタイピングとフィードバック
大掛かりなリニューアルプロジェクトの過程をすべて公開して行っていることもさることながら、そんな大胆なリニューアルを行政が行ったというのも、“行政=お堅い”というイメージがつきまとう日本から見ると、大きな驚きです。
まずプロトタイプをつくってみることで、現状を視覚化し問題点を確認し、フィードバックを反映してまたプロトタイプをつくる…一見遠回りに見えますが、それを繰り返すことが実は完成への近道となります。
弊社でも、ロゴマークやWebサイトのデザインを考える際、まずは紙と鉛筆で手の動くままにラフを描くということを大切にしています。
今回のリニューアルプロジェクトの過程は「CITY OF BOSTON DIGITAL INITIATIVES」で公開されていますので、IDEOの提唱するデザイン思考の実例のひとつとして、ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。
CITY OF BOSTON DIGITAL INITIATIVES
IDEOによる、ボストン市の大掛かりなリデザインプロジェクト