デザインにつながるデッサン
こんにちは。2月からブランコでデザイナーとして働いている舘と申します。
私は美術大学出身で、もともと絵を描くのが好きだったこともあり、会社ではWebサイトに使うイラストを描かせていただくことがよくあります。どんなテイストの絵を描くにも、基本となるのは大学受験の頃に毎日練習したデッサンです。
モチーフを観察し、表現する
「モチーフ(対象)をよく観察して描きなさい。」最近になって久しぶりにそう言われるようになり、私はあることに気づきました。Webデザインもデッサンも、根本的な考え方は一緒なんだと。
SWINGSを読まれている人のなかには、デザインや美術を学んでいる学生さんもいらっしゃるかもしれませんね。
デザインを学びたいのにデッサンから始めなくてはならず、デッサンを苦手に思っていた人も多いと思います。目の前のモチーフを観察し、見たままを紙の上に鉛筆だけで表現する作業は、一見デザインという行為からは離れているようにも思えます。
デッサンにはどんな抽象的な絵であっても必ずモチーフが存在します。モチーフをあらゆる方向から観察し、時には触ってみたり壊してみたりして、質感や成り立ち、自分とモチーフの距離感などをよく知るところから始まります。
触ったり壊したりできない場合は、その裏側や構造を想像してみます。そして自分の脳を介して、どうやったらそのモチーフを2次元の紙の上で表現できるかを試行錯誤し、手と鉛筆を使ってキャンバスに乗せていきます。
デザインにもモチーフは存在する
デッサンは単に“絵を描くこと”と捉えられがちですが、この一連の行為はデザインをする時のプロセスと大変よく似ていると思います。
デザインもまた、何もないところから好きなものを作り出すことではなく必ずモチーフが存在し、それを観察してよく知ることから始まりますよね。ここでいうモチーフとは、Webデザインならクライアント、製品デザインならユーザーやそれを売る側の人、インテリアデザインならそこに住む人やその土地の歴史など。
それらを観察した上で、どういうモノを作るべきかを考え、脳を介して表現し構築していく。デザインを学ぶ時にデッサンから始めることが多いのも、基本の考え方を根本的に学べるからではないでしょうか。
語源が同じ!
そもそもデザインの語源は、実はデッサンと同じなのだそうです。皆さん知っていましたか?
デザインとデッサンは、両方ともラテン語の「デジナーレ(designare)」という言葉からきているんですね。この言葉は“計画を記号に表す”という意味だそうです。
では、“記号に表す”とは一体どういうことでしょうか。記号学の意味を調べてみると、記号とは“言語を始めとして、なんらかの事象を別の事象で代替して表現する手段”とあります。
往往にして、デザインは見た目の意匠を作ること、デッサンは絵を描くこと、そのように考えがちですが、“ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること”という広い意味を持っているようです。だから、まずモチーフをよく観ることが大切になってくるんだと思います。
世界初の「デッサン授業」
初めてデッサンをデザインの授業に取り入れたのは、1919年にドイツに設立されたデザイン学校のバウハウスだそうです。
ミース・ファン・デル・ローエやヴァルター・グロピウスなどの著名デザイナーが校長を務め、近代の工業デザインに大きな影響を与えたバウハウス。手作りから機械生産への転換期であったその時代に、モノを装飾するだけではなく、人々の生活や社会を合理的にデザインすることを目的としていたそうです。
モノを客観的に見つめつつ美意識を育てられるデッサンを授業に取り入れることは、“工業に相応しいデザイナーを訓練する教育”につながっていたのかもしれませんね。
“よく観て、知る”ことから始める
私たちブランコも、デザインする際に観察することを大事にしています。
まずは「ブレスト(Brainstorming)」を行い、お客様の信念や背景、抱える課題などを紐解いていきます。対象を見つめ、見えない部分やユーザーの姿を想像して表現方法を考えていくことで、様々な関係性をデザインしていくことにつながります。
Webデザインという分野にデッサンが直接関係することはあまりないかとは思いますが、私がイラストを描く際に改めて気づいた、本質的な共通点でした。“モノづくり”というのは、どんな分野でもつながりがあるのかもしれませんね。