下北沢B&Bのコンセプトを受け継ぐ本屋が福岡にやって来る!

福岡にあるいくつもの本屋が一緒に街を盛り上げる取り組み「BOOKUOKA」や、無印良品の本屋「MUJIBOOKS」が有楽町に先駆けて福岡でオープンするなど、この数年福岡の本屋事情はとても盛り上がっています。

さらにそこに新たな刺激として、東京・下北沢にある話題の本屋「B&B」のコンセプトを継承するお店が、福岡・天神に期間限定で登場します。

B&Bの仕掛け人であり、この度福岡でスタートするプロジェクトのディレクションを手掛けるNUMABOOKSの内沼 晋太郎さんに、B&Bについてやご本人の読書観についてなど、幅広くお話を伺いました。

ビールが飲めてイベントを毎日開催する本屋

―下北沢にある話題の本屋B&Bとはどういったお店なのでしょうか。

内沼 B&BはBOOK&BEERの略で、ビールも飲めて、毎日トークイベントを行なっているという本屋です。

―お酒が飲める本屋というのは珍しいですね!

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内沼 そうですね。お店でお酒を出そうと思ったきっかけは、もともとB&Bは僕と博報堂ケトルの嶋 浩一郎という人と2人で始めたのですが、自分たちがお酒を飲んで本屋に行くのが好きだったんです。

お酒を飲んで本屋に行くと、普段だったら買わないような本を買ったりしますよね。お店側からすると、お酒を出すことで単純にお客さんの財布の紐が緩んで嬉しいという話でもあるんですが(笑)、そういうことを抜きにしてお客さん目線から考えても、お酒が入ることによって感覚が少し自由に開けて、普段関心がないものに対しても面白そうだなと気軽に思いやすくなる、そういう力がお酒にはあると思っているので、ビールを提供しています。

―本屋で毎日イベントをするというのも他にない試みですね。これはどういった意図で始められたのでしょうか。

内沼 本屋でのイベントは実はやりやすいんです。本は年間に8万タイトル出ていて、1日に換算すると200〜300冊も出ていることになります。それなのに著者が直接作品について話す機会が少ないと感じていたんです。

読者にしてみたら本をつくっている人の話を直接聞きたいし、書いた人にしてみても、苦労して書き上げた本なのだから記念のイベントをやりたいんじゃないかと思い、始めました。

イベントを毎日やるといったら、はじめは無謀だという声もたくさん出ていたんですが、僕は絶対毎日できると思っていて、実際に毎日イベントをやっています。

本でなるべく広い世界をつくる

―本屋において選書は1番個性の出るところだと思うのですが、選書にはどういったこだわりをお持ちなのでしょうか。

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内沼 僕が自分のお店のスタッフによく言うこととしては、「狭い店の中に、なるべく広い世界をつくろう」ということです。

欲しい本が決まっている人に対しては、ネット書店や大型書店といった品揃えの豊富な本屋が望ましいわけですよね。それに対し、街の中の小さい本屋にネット書店や大型書店と違う面白さや存在意義があるとすれば、それはやっぱり「なにか面白いものがないか」と来た人に対してどうサービスできるかということだと思うんです。

これもよく言うのですが、本屋をぐるっと1周することは「1番身近にある世界旅行」だと考えています。世界のあらゆることについて書かれた本が出版されているわけですから。

世間で売れているから、今話題だからというのに対応するのももちろん大事なんですけど、B&Bではそれよりも、売れたり話題になったりはしていないけれどこの広い世界にはこんな面白いものもあるよ、というものをできるだけ選んで、それらの間の文脈を繋いで見せることで、いかに世界の広さを小さな空間の中に構成するか、というところにこだわる棚づくりを心がけています。

―ネット書店や大型書店があるからこそ、逆にすみ分けがうまくできて、小さなお店では自由に楽しんで選書が出来るというのもあるかもしれないですね。

内沼 本当にそうだと思います。小さい空間の中でこの本の隣に何を置くかというようなことで僕らもお客さんも楽しめる。空間が小さければ小さいほど、全部を見て回りやすいというのもありますし、そこはすごく考えていますね。

また、B&Bでは毎日イベントをやっているというのがすごく大きく作用していると感じています。毎回さまざまなジャンルのイベントを行なっているので、初めてB&Bに来るというお客さんが常に存在しているんです。

そのお陰で毎回棚の見られ方が変わってくるので、それに合わせて僕らもどんどん勉強しながら手を入れて、棚がより深くなっていく、そんな良い相乗効果があります。常に棚の中の世界が広がり続けていくというような大きなメリットを感じています。

引用元:KONTRAST 公式サイト

引用元:KONTRAST 公式サイト

うちは本棚も売り物なんです。東京・緑が丘にあるインテリアショップ「KONTRAST」の北欧ヴィンテージ家具を使用しています。

ヴィンテージの1点ものなので、それが売れるとまた違う本棚が入ってくるので、本棚が変わるとそこに並ぶ本もすごく違って見えるんです。本棚が新陳代謝するということも、お店の鮮度を保つことに大きく役立っています。

買うところから読書は始まる

―行く度に新鮮さを味わえるとこまめに通いたくなってしまいますね!私は本屋さんに行くのが好きなんですが、本を買ってもつい積んだままの“積ん読(つんどく)”になってしまっています…。

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内沼 わかります、僕だってそうです。けれど、僕はそれでいいと思っています。本屋は巨大な1冊の本のようなもので、そこから本を買うということは、タイトルや中身を吟味して1番関心のあるものを選んで、それを自分の本棚に入れると決めることですよね。何を読み取りたいかを自分で選んで決めているわけですから、買う時点ですでに読書は始まっているともいえます。

また、必ずしも1冊の本に書かれた文字を最初から最後まで目で追うことイコール読むことではない、とも思います。全部のページに目を通したけれど何もわからなかったという人と、パッと開いた1ページに書いてあった1行が自分にとって一生大事な言葉になったことになったという人とがいたとして、どちらの人がよりその本を「読めた」かといったら、僕は後者だと思うんです。

本はちょうど、隣人とか気になる人のようなものだと思います。買って家の本棚に入れる度に、その人のことを隅から隅まで知ろうというのは大げさで、むしろTwitterでフォローするくらいの気軽な気持ちで買えばいい。この人とはいつか1回飲みにでも行ってみたいな、というくらいのちょっとした興味で本を買う。結果、ちょっとしたひと言で共通点を見つけて仲良くなり、一生の親友になることもあるでしょうしね。

東京と福岡を繋ぐ本屋

―なるほど。B&Bと内沼さんの本に対するお考えがわかったところで、今回福岡で始まるプロジェクトについて、詳しく教えて頂けますでしょうか。

内沼 詳しいお店の名前や場所は実はまだ秘密なのですが、福岡の天神の一等地で、下北沢にあるB&Bをベースとした、期間限定の本屋をやります。6月のオープンに向けて今着々と準備を進めているところです。

お酒が飲めて、本棚も売り物で、トークイベントを行なうというB&Bの特徴はそのままに、福岡店ではさらに焼酎も出します。

東京と福岡のお店を繋いで何かをやったりしながら、期間限定であるということをポジティブに解釈して面白い企画を行っていきたいです。

また、福岡ならではの企画として、福岡のゆかりの本や、個人でつくっているようなリトルプレスやZINEみたいなものを含め、福岡で本をつくっている人たちの本をたくさん扱いたいですね。

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イベントにおいても、東京から作家の方を連れて来たりはもちろん、福岡で面白いことをやっている人にも出て欲しいですし、その方たちに東京のイベントにも出てもらえたらと思っています。福岡にない東京のものを持って来たり、福岡のものを東京に持って行ったりと、福岡と東京を繋ぐ役割を果たせたらいいですね。

期間が決まっていることで、僕らにとってもその期間を大切にしようという気持ちになるし、お客さんにとっても期間が限られているから1度は行こうと思ってもらえたら嬉しいです。

―とても面白いお店になりそうですね!

品揃えは“人”がつくるもの

内沼 そんな間違いなく面白くなりそうなお店で働くスタッフを、いままさに募集中です!(笑)

1番望んでいるのは書店で働いた経験がある方なんですが、経験がなくても本がとにかく好きでいろんなことに関心・知識がある人であれば、ぜひ一緒に働きたいです。

お店の品揃えはそこで働くスタッフがつくるものだと思っています。もちろんB&Bのセレクトというのが既にあるので、最初の立ち上げ時はそれを下北沢から福岡のお店に持ってくるような感じにはなりますが、その後少しずつスタッフひとりひとりの色が出て、それが交じり合ってお店の色になり、独特の品揃えになると思っています。

期間限定なので集中して何かを得るぞというような、志の高い人に来てもらえたら嬉しいです。

―もしかしたら期間が終わった後、そのスタッフを東京へ連れて行くということもありえるんでしょうか。

内沼 今のところ予定はないですが、すごく良い人であればありえます!そのままうちで面倒見させてください!(笑)

―良いスタッフさんが見つかるといいですね!6月のオープンを今から楽しみにしています!本日はありがとうございました!

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