常に面白さを追求するantymarkが考えるVRの可能性
プロジェクションマッピングの第一線で活躍されている、antymarkの松波 直秀さんに以前お話を聞かせて頂きました。
常に面白いことを追求しているantymarkの新たな動きについて、今回はサウンドエンジニアとセールスをご担当されている小林 孝稔さんにお話を伺いました。
数多くの転職を経験
―小林さんは今年6月にantymarkに入られたそうですが、以前はどんなお仕事をされていたんですか?
小林 私はすごく転職経験が多いんです。学生の時から話をすると、テレビ局でMAという音声を映像に合わせて編集する仕事のアルバイトをしていました。大学で音響科を専攻していたので、就職するときはテレビ局をやめ、PAという音響の仕事をやっていたら、突発性難聴になってしまったんです。
いまはもう半分くらい回復したんですけど、左耳が聞こえなくなったのでさぁどうしようと思い、IT系が儲かると聞いて、IT系にアルバイトをしに行きました。そこで確かに儲かったんですが、忙しすぎて周りで体調を崩す人が続出していたので、仕事をやめて1年位ぷらぷらしていました。
ちょうどその時、音楽ソフトウェア・ハードウェアを取り扱う輸入代理店が社員を募集している、と大学の先輩に声をかけてもらって、そこに行って就職し、10年ほどセールスとマーケティングの仕事をしていました。
音響の営業は、お客様に提案・販売をして、インストールするところまでを担当していたので、営業自身が音響のスキルを持っていないといけないんです。企業や、スタジオ、街の楽器屋さんといったさまざまなお客様を担当していた経験を活かして、antymarkではサウンドエンジニア、セールス、マネジメントを担当しています。
VRという新たな領域
―antymarkで新たな動きがあるとのことですが、どんなことを始められるのでしょうか?
小林 これまではプロジェクションマッピングの案件が多く、それにプラスして、センサーを使用したインタラクティブな仕掛けや、デジタルサイネージを手掛けていました。
今度はそこにVR(バーチャルリアリティ/仮想現実)系のコンテンツを増やしていく方向に動き始めVR事業紹介ページも立ち上げました。360度、さまざまな角度から画像や映像を見ることができるので、VRは面白いと思うんです。
例えば静止画のパノラマVRを作成する場合、撮影方法は人によってさまざまですが、私は魚眼レンズを用いて周囲8方向を3枚ブラケットで最低24枚撮影します。その後、編集ソフト上でスティッチとHDR化を施し、最終的な一枚絵に仕上げます。
静止画のパノラマVRを作成されている方のほとんどは、似たような作業をされていると思いますよ。
VRの可能性
―小林さん自身のルーツは音楽ですが、松波さんと組んだことにより映像系のお仕事が増えたということでしょうか?
小林 少し話を遡ると、私は大学で音響科を専攻していたんですが、1番興味を惹かれたのが写真と映像だったんです。音響科なのに、1人だけ卒業制作に短編ムービーをつくって先生に怒られていました(笑)
写真はずっと学生の時から撮っていて、普通に撮影するのも飽きてきたので、2008年頃からはHDRばかりを撮ってきました。その後、HDRがポピュラーになってきたので、「人と違ったことをやろう」と思い、次はカラー赤外線写真を撮り始めたのですが、あまりにもニッチ過ぎて誰にも見てもらえませんでした。
次になにか面白いことをやりたいなと思った時に、VRと出会ったんです。京都に20年間もVRを専門にやられている方がいて、その方と松波がたまたま知り合い、いろいろ話をしているうちに、手伝いをする代わりに情報を教えて頂けるようになり、VRの撮り方のノウハウをひと通り教えていただいたんです。
とても面白い技術なので今いろいろ撮っていて、来年Oculus Rift(オキュラスリフト)が製品化されることもあり、企業のプロモーション用に360度のコンテンツがつくれないかと考えています。
VRコンテンツは専用のソフトやビューワーがなくても、Webブラウザやスマホでも楽しむことができます。だから、誰でも気軽に体験できるというメリットもあります。
Googleのストリートビューはまさにバーチャル・ツアーですし、デジタルサイネージの場合には、大型のタッチパネルを用いて、指で触れると好きに動かすことができるという使い方もできます。
住宅展示場や結婚式場のような、実際に中を見たいという需要がある場所に、VRをつかってデジタルカタログをつくるのは良いんじゃないかと考えていたら、実際にオファーをいただいて、これから制作を開始するところです。
リグの工夫
―面白いですね!ただ、オキュラスリフトで見る映像は解像度があまり良くないイメージがあります。
小林 オキュラスリフトの推奨値は4K/75fpsだそうで、業界の先輩方が制作された本気コンテンツを体験させてもらいましたが、すごかったです。
例えば、全天球パノラマのムービーは小型のアクション・カムを6台使って撮ったりしますが、それだと推奨値に近づけることはできますよ。
―リグがカメラに不思議な角度でついていますが、これはなぜなんでしょうか?
小林 斜めなのは私が普段持ち歩いている小型のデジカメ(マイクロフォーサーズ)との兼ね合いでもあるんですが、魚眼レンズを使用して対角線上で上から下までめいいっぱい写せるようにです。
さらにリグをレンズ側につけることで、人間の目による視差をなくすことができます。常に同じ位置で像を結ぶことで、より自然な画になるんです。
このリグも面白くて、3Dプリンターでつくられているんですが、世界中を主に自転車で旅行していたニュージーランド人が、美しい景色を残したいという思いから生まれて、販売されているものです。
現場使用に耐えられるように、硬化質ナイロンという特殊な硬いナイロンを使用していて、しかも旅人ならではの視点で、非常に軽量でコンパクト、持ち運びも苦になりません。
これからのプロジェクションマッピング
―そんな実用的な使い方もあるんですね!弊社でも3Dプリンターが欲しくなりました(笑)。今後VRに力を入れていくとのことですが、平行してプロジェクションマッピングも続けていかれるんですよね?
小林 もちろん、プロジェクションマッピングも続けていきます。自分がもともと「音」出身なこともあって、マッピングを鑑賞する際は音に注意がいくのですが、映像と音のシーケンスがバッチリな作品はカッコイイですね。
例えばテクノだったら、4つ打ちでキックが入っていますよね。見ている方はそれでリズム取れるので、時間感覚を意識しやすいんです。
単純なことですが、カッコイイ作品は映像を音のBPM(テンポ)と同期させていて、「小節の頭」や「拍」で映像の強弱をつけたり、小節単位で場面転換を入れるなど、音をしっかり意識しているんです。
先ほど学生時代にMAのバイトをしていたことを話しましたが、MAは「映像を見ながらBGMや効果音、ナレーションを最適な箇所に入れて、結果として映像の面白さや魅力を伸ばす」作業なんですよ。その逆を行なっているのがクラブVJですよね。
antymarkにおいて、これまで音響で培ってきたことを活かした視点で、コンテンツをより良いものに仕上げていくのが私の役割かなと思っています。
―プロジェクションマッピングも進化していき、そこに更にVRが加わり、今後もantymarkの活動から目が離せないですね。本日は興味深いお話をありがとうございました!
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