ハレの文化が育つ街、金沢
こんにちは、ブランコの舘です。
私は子供の頃から大学までを金沢で過ごしました。のんびりした市民性を持ち、雨の日が多いためにしっとりとした奥ゆかしさを持つ城下町です。
金沢といえば、2015年3月に東京〜金沢間を結ぶ北陸新幹線が開業したことで、今何かと話題になっている街でもありますね。
北陸新幹線は、東京から長野、新潟、富山を経由し、金沢までを最短2時間30分でつなぎます。
首都圏から北陸へのアクセスがぐっと身近になったことで、観光地としての北陸がさらに注目されています。
様々なアーティストが参加!北陸新幹線
新幹線の車両デザイン監修は、フェラーリのデザインも手がけたプロダクトデザイナー、奥山清行氏。
バリアフリーにも配慮した機能的でシンプルな形状でありながら、日本の伝統色や伝統柄を随所に組み込むなど、「和の伝統美と最新技術の機能美」をマッチングさせるというコンセプトがうかがえます。
新幹線が金沢駅に到着する際のメロディーは、金沢出身であるアーティストの中田ヤスタカ氏が作曲しました。金沢らしい日本的な短調のメロディーと、未来的テクノサウンドが融合した艶やかな音で乗客を出迎えます。
また、北陸新幹線のCMはフランスのアーティスト、ポール・コックスが製作した軽快なアニメーション。北陸の有名なお祭りや名産物を描き、その中を新幹線が颯爽と駆け抜けるようなワクワクした気持ちにさせられます。
新幹線の導入は北陸にとって革新的な取り組みですが、古くから持っている「伝統」の色を大切にし、現代の最新技術やテイストと融合させたようなデザインを随所に取り入れています。
金沢は「ハレ」の文化
金沢が育んできた伝統工芸は、そのほとんどが金箔や輪島塗り、九谷焼、加賀友禅などの「高級志向」の強い嗜好品です。
これは加賀百万石を納めた前田利家が「かぶき者」の風潮を好み、かなりの派手好きだったことに由来していると言われます。文化奨励策を実施し、金沢の武将や町人の多くが茶道や能をたしなんだことから、それに必要な工芸品の製作が盛んになっていったというわけです。
例えば瀬戸焼や常滑焼で有名な愛知や、備前焼で有名な岡山などは、日常に密着した器や道具を製作する「ケ(褻)の文化」を持っています。それに対して金沢は、非日常の文化工芸品を扱う「ハレ(晴れ)の文化」が育ってきた街と言えます。
伝統をその時代に合ったものに変えていく
とはいえ現代では、普段使いではない高級な「ハレ」の伝統工芸品を作り続けるのは難しいもの。
しかし、金沢は同時に「新しい物好き」の性質も持っています。伝統をただ守り続けるのではなく、それを現代のプロダクトに取り入れて新しい商品を生み出すなど、形を変えることに積極的です。
例えば、金箔は健康にも良いという特性を活かして、金箔を使った化粧水やパックを開発したり、金箔を取り入れた新しいお菓子もどんどん生まれています。
九谷焼の窯元「上出長右衛門窯」は、2009年にスペインのアーティスト、ハイメ・アジョンとコラボレートしたコレクションを発表しました。醤油さしなどの小物は、今では若い層にも「いつか手に入れたい一品」として人気です。
また、九谷焼を現代に受け入れやすいようアレンジして製作する作家さんもたくさんいらっしゃいます。
そして、街並みも新旧がゆるやかに混在しています。2004年にオープンした金沢21世紀美術館をはじめ、金沢駅もてなしドーム、鈴木大拙館、金沢海みらい図書館、商業施設「かなざわはこまち」など、フラッグシップとなる現代建築が続々とオープンしています。
また、旧県庁舎を改装して生まれた「しいの木迎賓館」や、かつて武器倉庫だった建物を改装した「金沢歴史博物館」など、古い建物を生かしながら活躍する建築も多く生まれてきました。
変わり続けるからこそ、キラキラした街
古いものを残しながら新しく生かす、著名アーティストを起用して伝統を現代のプロダクトに落とし込む…。
私の所感では、金沢は比較的伝統を新しく塗り替えていくことに積極的な街だと思います。
それも「ハレの文化」の華やかさを持っている街だからこそ、ただ新しいだけでなはい、歴史に紐付いた魅力を発信していけるのではないでしょうか。
金沢にとっての最も革新的たるものが、北陸新幹線です。
北陸新幹線最速列車の名前は「かがやき」。まさに、ハレの文化を持つ金沢にぴったりの名前だと思っています。
是非、「ソワソワ、ワクワク」した雰囲気いっぱいの今の金沢を訪れてみてください。