流行りモノ、ずっと変わらないモノ、言葉にまつわるエトセトラ
皆さん、こんにちは。鈴木です。日頃はコピーライターとして様々な言葉や文章を作っていますが、表現の間違いや誤字、脱字がないように細心の注意を払っているのはもちろんのこと、特に意識している点を一つ挙げれば、それは俗っぽい流行語をなるべく使用しないということです。
クライアントワークに限らずこのメディアにおいても、一過性のブームに左右されないような言葉遣いを心がけながら、ライティングもデザインと同じく巷の流行ばかりを追うのではなく、逆に流行を生み出して追われる立場になりたいと恐れ多くも考えたりします。
だからこそ、まずは流行語とは一体どのようなものなのかを知ることが必要だと思い立ち、少しだけ調べてみました。
これが流行語の“元祖”?
日本における流行語の歴史の始まりは、戦前までさかのぼります。1920年代にいくつか流行した言葉のなかでも有名なものに「モボ・モガ」(モダン・ボーイ、モダン・ガールの略)があります。大正から昭和初期の、日本の若者の文化的背景がよく読み取れる表現ですね。
余談ですが、私がこの言葉を初めて目にしたのは20余年前、東京都渋谷区にある老舗カフェ「モボ・モガ」でした。食べ物も飲み物もそのボリュームが評判で、レトロともモダンとも感じられるような内装のお店ですが、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかと思います。
永く使われているあれこれ
話題を元に戻しますが、戦前から戦後にかけて、毎年のように色んな言葉が流行したようです。現在でも日常で使われている言葉も実はその当時の流行語だったというものが多く、例えば1947年の「PTA」やその翌年の「ノルマ」。それから1952年の「デフレ」も、日本では流行語として取り上げられていました。
あとちょっと“大人向け”な内容で「エッチ」という言葉は1955年の流行語の一つですが、その後1980年代にテレビのバラエティ番組を通して、お笑いタレントによって現在のような意味合いでの使われ方が広まったようです。
ギャグもまた流行語
流行語が正式に表彰されるようになったのは、出版社の自由国民社が1984年に「新語・流行語大賞」を設けたことが始まりです。同社が発行している「現代用語の基礎知識」には入賞した言葉のほかにもその年のたくさんの流行語が掲載されていますが、流行語の全てが新語ということではないようです。
また近年は、特にテレビや映画、あと報道などで繰り返し使われた言葉が、それを見たり聞いたりした大勢の人々によってまた繰り返されて流行語となっていく傾向にあります。
昨年の「ありのままで」「壁ドン」「ダメよ〜ダメダメ」「もしかしてだけど〜」「STAP細胞」、一昨年の「今でしょ」「じぇじぇじぇ」「倍返し」「PM2.5」などなど。
何度も耳にしていたのに、その翌年になるとパタッと聞かなくなる、そんなことがよくあります。お笑いの世界では「一発屋芸人」なんて言われている人たちがいますが、それはそれで彼らのギャグは歴史にその名を刻んでいる訳ですね。
私も言葉に関わる仕事をしている以上、こういう一発屋のような流行ではなく、何かしらの形で自分の言葉が世間を渡り歩いて語り継がれてほしいものです。
言葉でデザインする
ところで、私たちブランコはデザイン事務所として、デザインとは「より豊かな生活を実現するために思想や概念を組み立て、それらを表現すること」であると考えています。それは色や形などに限らず、言葉も一つのデザイン的な要素だと私は思います。
デザイナーが世の中を便利にしたり幸せにするためにデザインを手がけるのと全く同じように、コピーライターも言葉を書くうえで、想いと考え方を組み立てながら、世の中のためになるような“何か”を表現し続けなければいけないと自分で自分に言い聞かせています。
もっと多くの経験を積んで、流行語のようなインパクトのあるモノではなく、これから先もずっと変わらない素敵なモノを言葉でデザインできるようになりたいと思う今日この頃です。