参加型コンテンツでユーザーと育てるSNSブランディング
ブランド公式アカウントがユーザーを巻き込む企画投稿は、近年注目を集め、広く拡散されています。ご自身の興味関心に合ったジャンルの投稿を行う公式アカウントやインフルエンサーをフォローされている方も多いのではないでしょうか。SNSなどのWebサービスが大好きな私が、SNSでの公式アカウント運用とインフルエンサーマーケティングについて、具体的な事例を交えながらご紹介します。
事例1:ユーザーと調査結果をつくりあげる
株式会社ゼンリン様は、地図会社ならではのユニークな取り組みを展開されています。多岐にわたるカテゴリーで「境界線」を調査し、ユーザーからのリプライを集約して地図を作成されています。習慣や呼び方など地域性が異なるテーマを取り上げ、これまでにも数多くの調査を実施してきました。
先日の調査では、「メンチカツ」と「ミンチカツ」の呼び方の境界線に関する協力依頼が行われ、その結果が地図で発表されました。
【ゆる募】「メンチカツ」と「ミンチカツ」の呼び方の境界線を調べたいと思います。
よかったら、ご出身の都道府県と呼びかたをリプにて教えてください🙇♀️
#メンチカツの日 pic.twitter.com/6Ije7prJ0Y— 株式会社ゼンリン (@ZENRIN_official) March 6, 2025
「関西地方を中心に『ミンチカツ』と呼ぶ方が多かったですが、年代によっても異なる傾向が見られ、薄れゆく方言の実態を実感しました」というコメントとともに、境界線の情報や、自身の認識と他のユーザーの結果を比較できる地図も公開されています。
みなさんご回答ありがとうございました!メンチカツとミンチカツの呼び方、現在までの結果を地図にしました。
関西地方を中心にミンチカツと呼んでる方が多かったですが、年代によっても違うようで、薄れゆく方言の実態を感じました。
回答数的には暫定ですが、よかったらご覧ください🙌 pic.twitter.com/aSCLFWHrwx
— 株式会社ゼンリン (@ZENRIN_official) March 7, 2025
同社は地域の特性に関する調査依頼をX(旧Twitter)を通じて呼びかけ、ユーザーからの回答を収集しています。ユーザーは現在居住している地域や出身地に関する意識調査に回答する形式であるため、参加しやすく、共通のテーマにおいて「自分はこうだが、他の人はどうだろうか」とコメントする楽しさがあります。
調査に共に取り組み、その結果を知りたいと考えるユーザーから多くのコメントが寄せられています。地図を作成する企業が興味深い地図を提供しようとしている姿勢は、コメントをせずとも調査結果を見守るユーザーを多く生み出しているのではないでしょうか。フォローやリツイート(RT)が不要で、コメントのみで参加できる点は、コンテンツがオープンに多くのユーザーの目に触れる機会を増やし、リーチ拡大に繋がりやすい仕組みとなっています。
事例2:特別なコンテンツで憧れと注目を獲得
インフルエンサーマーケティング市場が成熟期を迎える中、ブランドは他社との差別化を図るため、より斬新でクリエイティブなアプローチを模索しています。特定分野の専門家による商品レビューといった一般的な手法に加え、インフルエンサー個々の特性を活かした、より注目を集める投稿企画が増加しています。
例えば、インフルエンサーに巨大な商品を贈るブランドの取り組みは、インフルエンサーマーケティングの一環として注目を集めています。この戦略は、視覚的なインパクトと話題性を創出し、SNSにおける拡散力を高めることを目的としています。ブランドから店舗では入手できない巨大な商品が提供されるという特別感に憧れ、インフルエンサーと同様に巨大なショッパー(買い物袋)を持って自撮り投稿を行うユーザーも現れています。
過去に様々なコスメブランドがインフルエンサーに巨大なコスメを提供して話題になっていました。
TIRTIR
@tamukun_36 大きさでいうとダチョウの卵くらいです
Millefee
@memeron_me なにこのデカパフwwwて思ったら、可愛いあのブランドさんのだった!パフは非売品でいただいたのですが、まさかの最近シャドウを全カラー集めたブランド様だと知り、感激しました߹~߹🤍🤍 #MilleFee #ミルフィー #ミャオパウズアイシャドウパレット #Qoo10#コスメ#美容 ♬ オリジナル楽曲 – めめろん🍈
MILLMILL
通常の何倍もある巨大なサイズの商品はビジュアルのインパクトもあり、インフルエンサー限定の非売品という特別感からも注目を集めていました。
めざすのはユーザーとのシームレスな繋がり
InstagramやTikTokの普及により、個人や中小企業がSNSを気軽に活用することでフォロワー数1万~10万人のナノインフルエンサーが急速に増加していて、インフルエンサーマーケティング市場は2022年は615億円でしたが、2025年には1,021億円に成長する見込みと言われているそうです。
ユーザーがフォローやリプライを行うきっかけや目的も、興味のあるカテゴリーに詳しいインフルエンサーから有益な情報を得るという情報収集目的から、「インフルエンサーのような投稿がしたい」と自ら情報発信するユーザーが現れるほど、SNSの活用方法も変化しています。ブランドからインフルエンサーを通じた一方的な情報発信ではなく、インフルエンサーの活動に共感したユーザーの行動までを視野に入れた情報発信を行うことが、より効果的であると言えるでしょう。
企業とユーザーをゆるく繋ぐコンテンツの企画
多くのブランドは、公式アカウントを企業からの情報発信(お知らせなど)のために活用していますが、リプライやタグ付けなどを通じてユーザー側からブランドへ接点を持つことができれば、関係性はより一層深まります。
そのためには、直接的なプロモーションだけでなく、間接的な情報発信や、話題にしたくなるようなコンテンツを提供することが重要です。これにより、情報収集に留まらず、自ら発信したりコメントを返したりしてブランドと繋がるユーザーとの接点が生まれます。
一見遠回りに感じるかもしれませんが、ブランドのサービスや世界観に触れ、ファンになるきっかけは、このような緩やかな繋がりの中に存在すると日々SNSを見ながら感じます。
自社らしいブランドを感じさせるコンテンツを投稿して、ブランドのファンを増やしていくことが大切です。
自社のターゲットに合わせたコンテンツを企画する上では、世代や地域などを考慮することも重要です。下記の記事もぜひ参考にしてください。

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