“これから”について考えるスペシャルトークセッション
「まなぶ。つくる。はたらく。」

11月26日(土)に福岡・天神にあるTECK PARK MAKERSにて開催されたスペシャルトークセッション「まなぶ。つくる。はたらく。」。

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登壇者は、日本を代表するコピーライターであり「ほぼ日刊イトイ新聞」の主宰も務める 糸井 重里さん×立命館アジア太平洋大学(APU)・今村 正治副学長×株式会社グルーヴノーツ代表取締役会長 佐々木 久美子さんという豪華な顔ぶれ。このイベントが面白くないはずがない!ということでワクワクしながら参加してきました。

インターネットの急速な普及より20年が経ち、テクノロジーの進化も目覚ましい今、社会のありかた、私たちの働きかた、学ぶということもどんどん変化してきています。

そんな今とこれからの“いろいろ”について、クリエイティブ、テクノロジー、教育という、それぞれの分野の第一線で活躍されているお三方が集まり、自由に語らう2時間。どんな話が展開されたのでしょうか。

本日はイベントの様子を一部抜粋してレポートします。

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これからの言語とコミュニケーション

国際大学の副学長として今村さんが気になっておられるのは、「今後言語の境界がなくなっていく」ということ。これまでは他国の言語が出来る、ということが“国際人”の前提となっていましたが、これからはどう変化していくのでしょうか。

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「“言語”という考え方がなくなりつつあるのでは」とは、佐々木さん。すでに話している言語をリアルタイムで翻訳するという技術はほぼ完成していて、覚えたり分析したり計算をするというのはコンピューターの方が人間よりも圧倒的に得意で速いという現実があります。
「これまで専門知識の深さや暗記力の高さが求められていた専門職などの価値が、これから大きく変わっていってしまうのかもしれません。」

記号としての言語だけでいうと、すぐにでもコンピューターに委ねられてしまいますが、コミュニケーションという視点から言語を考えると、同じ言葉でもそこに乗っている感情や、声質、状況などにより含む意味やニュアンスは変わっていくもの。

糸井さんは、「その部分を置き去りにしたまま、“記号論”としての言語の話が先行している気がする」とおっしゃっていました。少し先の未来、果たして見えない“感情”部分の判断も、コンピューターには可能になるのでしょうか。

クリエイティブが世の中に出来ること

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イベント中、自分にはまったくクリエイティブ性がないとこぼされた佐々木さんに、糸井さんが「その発言が面白い!(笑)」という場面がありました。

クリエイティブで会社が成り立っているという糸井さんにとって、クリエイティブとは「あ!いいこと考えた!」ということ。子どもから大人まで誰しもクリエイティブな瞬間があり、その思いつきをそのまま実行すると、それは案外仕事になる、とおっしゃっていました。

これからテクノロジーがどんどん発達し進化していく時代においては、クリエイティブやアートがわからないと、テクノロジーをプロデュースできないので、九州は美大や音大をもっと増やしたほうがいい、という意見も出ました。

ルーティンワークや簡単な作業などはどんどんロボットに取って代わられていくことが予想される近い未来、人間にしかできないこととして、クリエイティブな発想や感性が今後は重要になってくるようです。

これからの“学び”について

SNSが発達したことで、ひとりひとりの発言力・発信力が高まり、“インスタグラマー”、“ユーチューバー”などこれまでになかった職業が次々と生まれています。

大学が“将来へのパスポート”であったり“約束の場”である時代が終わりを迎え、これからの大学はどういう場であるべきなのでしょうか。

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「我々大学の立場からすると、大学の良識や常識に居直らず、自らどう“反逆するか”が大事だと思います。APUのように地方で惹きつけるとか、どんどん既存の大学のイメージからはみ出していき、“大学が大学らしくないことをする”というのが僕の夢です」とは今村さん。

これからの“学び”について、今村さんは高校生やその親御さんに「世代交代」が起きていると、よくお話されるそうです。

今ものすごいスピードで世界全体が変わっていて、はっきりいって大人のこれまでの経験や価値観はあてにならない、約束された道はないから、大人を頼らずに自分でやっていって欲しいと。

「私たち大人の経験は過去の事象。これからのことをいかに考えられるかの方が価値があるのかな、と私も最近思いますね」と、佐々木さんも賛同されていました。

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人間は、“感じる・思う・考える”という順番で思考が動いてるのではと考える糸井さんは、「“感じる”ということはすべてのベースとなる。“あ、いいこと考えた!”とひらめくためには“あれ?”と違和感を感じることがとても大切」とお話されていました。

時代に流されそのままを受け入れるのではなく、「あれ?これでいいのかな?」と、違和感をしっかり感じること。立ち止まり考えること。「“違和感は発見”という気づきが大切ですよね」と今村さんもおっしゃっていました。

“学ぶ”と聞くと、どうしても“暗記”という行為を含んだ、教科書や参考書に沿って知識を吸収するというイメージが先行してしまいがちですが、実はいつ・どんな瞬間も、人は周りの状況から常に“学んで”います。

“学ぶ”ことに対して気負わないこと、自分の感じた“違和感”を見逃さずにしっかりと見つめることが大切なのかもしれませんね。

“感情”や“ひらめき”を大切にする

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テンポよくどこまでも自由に広がっていくお三方のお話は、時に会場をどっと沸かせ、時に皆が深く頷き言葉を噛みしめ、とても濃い2時間となりました。

“いい子・いい人”の基準、“平凡であること”の大切さ、“グローバル”がもてはやされている現状についてなど、書ききれないほどのさまざまなお話があり、新たな視点と刺激をたくさん得たように思います。

めまぐるしいスピードで変化し続けるこれからの時代、“感情”や“ひらめき”といった“人間にしかできない”部分を伸ばしていくのが大切なのだな、と今回イベントに参加してしみじみ感じました。

最後に「コピーを思いつかない時、何をされていますか」という質問に対する糸井さんのご回答をご紹介。

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やはり糸井さんでもコピーを思いつかない時は絶えずあり、そんな時は、「お風呂に入る、散歩をする、本棚の背表紙だけを眺める、何かを食べに行く、寝る」とのこと。

「そうする中で、誰かに会った時のひと言や、本を読んだ時に、これかなというトゲみたいなものがひょいっと見つかる」のだそうです。いくつかある対処法の中でも、これまで一番生産力が高かったと感じるのはお風呂。佐々木さんもお風呂にはいつもiPhoneを持ち込み、思いついたことをメモしているとおっしゃっていました。

皆さまもアイディアに詰まったときには“お風呂に入る!”を試されてみてはいかがでしょうか。

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イベントの様子が以下のURLにて「LOVE FM」でポッドキャスト配信されています!

ここでは書ききれなかったお話が会場の空気とともに楽しめるので、お時間を見つけて聞かれてみてくださいね。

http://lovefm.co.jp/study_create_work/blogs/podcast

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