伝統工芸の新たな魅力「SECRETS FROM FOREST 森のヒミツ COMPANY展」

“私たちは森へ行きます。
森はいつもみずみずしくて、新しくて、きれいです。
森のなかを歩きながら、色や形や質感や、生きものや食べものを見るのは気持ちがいいです。
私たちはよく森へ行きますが、いつ行っても心がわくわくします。”
(COMPANYから展示に向けたメッセージより、一部抜粋)

インスピレーションの源は“森”という、フィンランド人ヨハン・オリンさんと韓国人アーム・ソンさんからなるフィンランドを拠点に活躍するデザインユニット「COMPANY」。2人は現代のデザインと世界各地の伝統工芸の融合を試みる「Secrets」シリーズを展開しています。

フィンランドのデザインスタジオの様子 (左)ヨハン・オリンと(右)アーム・ソン 2016年

フィンランド×九州

「a good product has good spirit. (良いプロダクトにはよいスピリットが宿る)」という信念のもと、彼らはさまざまなものづくりの現場を自ら訪ね、職人たちと実際に交流し、リサーチを重ねることを大切にしています。

各国の職人たちとのやりとりでは言葉に重きを置かず、“ヒミツのメッセージ”とコミュニケーションでやりとりを重ね、伝統をうまく生かしながらも彼らなりのチャーミングなスピリッツが吹き込まれたプロダクトを生み出しています。

(左)Secrets of Southern Japanシリーズより八女コマ《 MOSS MOSS SPIN》 2017年
(右)Secrets of Southern Japanシリーズより尾崎人形《 MOSS MOSS STUMP》 2017年

近年2人が注目しているのは「九州」。福岡・八女地方のコマや提灯、織物、佐賀の郷土玩具の職人たちとの交流、そして屋久島の豊かな自然から影響を受け、新たなプロダクトシリーズが生まれました。

テーマは“森のヒミツ”

「『私たちは何のためにデザインをしているのだろう』と森に行くと思うようになりました。形、色、食べ物も森の中にはある。ある意味デザインを全く必要としない空間が森にはある。森はそういったことを考えさせる場所でもあります。」とアームさんはお話しされていました。

デザインを生業としている2人が森で出会うのは、デザインを必要としない、そのままで完成されたものたち。そこに行くことで「何のためにデザインをしているのか」と、原点に立ち返るきっかけになっているそうです。

しかし私たちの生活はいまや「森」の中だけでは成り立ちません。

三菱地所アルティアムにて開催中のCOMPANYの展示「SECRETS FROM FOREST 森のヒミツ COMPANY展」では、「森のヒミツ」をテーマに、ものがあり人がいるにぎやかな街の世界と、デザインを必要としない森、そしてその間をつなぐものづくりが表現されています。

街と森をつなぐものづくり


展示会場に入ると、絵本の中に入り込んだようなファンタジックでなんともチャーミングな空間!そこには40種類400体もの作品がズラリと並びます。ひとつひとつは可愛らしい作品ながら、これだけの数が並ぶと圧巻です。



街を表す壁にはCOMPANYの2人の映像が流れ、反対側の壁には森が。街から森に近づくにつれて、アイスや野菜・果物といった食べ物から人、動物、木などモチーフが変化していきます。



天井には丁寧に描かれた無数のスケッチが展示され、言葉に重きを置かず、スケッチを通して職人とのコミュニケーションを重ねてきた痕跡を見ることができます。


 

伝統工芸の新たな魅力


生態系や食物連鎖をマトリョーシカで(しかもこの上なく可愛く)表現し、“こけし”の技術を用いた木や花のオブジェ、そして佐賀の尾崎人形「長太郎」や八女の「八女コマ」も新たな魅力を放ちます。



2人の目を通してみた各国の伝統工芸は、こんなにも活き活きとチャーミングなものなのか、と思わずにいられませんでした。本展を通して初めて知った九州の伝統工芸の存在もいくつもあり、“ソト”から見るからこそ気づく良さや魅力があるのかもしれませんね。

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