助け合いの心で未来につなぐ地域の誇り「小石原焼」
福岡県朝倉郡の東に位置する東峰村に伝わる伝統工芸「小石原焼」。
ぬくもり溢れる小石原焼が繋いだ、“思いやり”“助け合い”の心と、これからの伝統工芸の生き方を発見しました。
東峰村の“誇り”小石原焼
福岡県朝倉郡東峰村で300年以上続く「小石原焼」。
普段使いの器として生活に寄り添ってきた小石原焼は、素焼きをせずに焼き上げる技法で土の力強さが特徴です。
表現1つでさまざまに印象を変える小石原焼ですが、シルエットやデザインを変えても、どの器からも必ずと言って良いほど、ぬくもりを感じます。「“用の美”を確立した」と言われており、窯元によって異なった技法で表現される模様や鮮やかな色で、普段の食卓にちょっとのアクセントが加わり、料理を引き立て、空間を明るく賑やかにしてくれそうです。
東峰村では毎年5月には「春の民陶むら祭」、10月には「秋の民陶むら祭」と題し陶器市が開催され、全国からは多くの陶器ファンが訪れています。
作り手と技法
窯元、作り手、技法などの違いで、器の魅力はさまざま。最近では伝統にモダンを加えたスタイルが増えています。
技法には、鉋で模様をつける「飛び鉋」、刷毛や櫛を使い波のような模様をつける「刷毛目・櫛目」、指で自由な模様をつける「指描き」、釉薬を全体に掛け艶やかな仕上がりの「流し掛け」、一部に釉薬を少しずつ掛けることで独特の表情を作る「打ち掛け」、釉薬を調整しながら一気に描きあげる「ぽん描き」の大きく6種類があります。
小石原焼はあらゆる技法を器に合わせ展開し、表現します。どの時代の生活にもマッチする、魅力が詰まった陶器です。
小石原焼のこれから
7月上旬の九州北部豪雨により被害を受けた福岡県朝倉郡の東に位置する東峰村。そこには小石原焼の窯元が50ほどありますが、豪雨によりこれまで通りの経営が困難な状況が続いています。
福島県で「大堀相馬焼 松永窯」を経営する松永 武士さんは、「窯元さんの本来の仕事ができない今こそ、東峰村の“誇り”を少しでも全国に発信するお手伝いができれば」という思いで、自身の店舗にて小石原焼の販売(期間限定)を開始しました。
松永さんは2011年におきた東日本大震災による原発事故の問題で、窯元の強制退去を余儀なくされるという経験をされています。
過去の“たくさんの窯元さんに支えてもらった”という経験の中で、次は支える側に廻ろうとお手伝いの意を込めて、自身の店舗での商品販売という行動に写りました。
大堀相馬焼 松永窯は震災以後、販路がなくなったことをきっかけに、インターネットでの販売・広報宣伝を実施しています。そのやり方を他の工芸に活かせたらという想いで、全国の「ちょっとハレの日の器」を集めたブランド「縁器屋(えんぎや)」という屋号を立ち上げました。
そこでは、小石原焼の鶴見窯、圭秀窯、マルワ窯、やままる窯、マルダイ窯、カネハ窯、6つもの窯元が繋がっています。
「松永窯」での販売は、小石原焼の窯元さんと共に運営しており、売上げの60パーセントが各窯元へと支払われるそうです。1日でも早く以前の生活が送れるよう、願っています。
縁器屋(えんぎや)
全国の「ちょっとハレの日の器」を集めたブランド