ブランディングとサステナビリティの融合‐グリーンブランドの力
先日、出張でANAを利用した際、何気なく選んだフライトが”グリーンジェット”だったことで、”グリーンブランド”という存在に気が付きました。この経験は、企業がブランディングと持続可能性(サステナビリティ)をどう結びつけ、社会的課題に対応しつつブランド価値を高めるのかについて考えるきっかけとなりました。
サスティナビリティを考慮したブランディング、グリーンブランドとは
そもそもグリーンブランドとは何を指すのでしょうか?これは、企業が製品やサービスの運営において環境への配慮を行い、それを顧客に伝えることでブランド価値を強化する考え方です。つまり、サステナビリティをブランディングの一部として組み込むことで、企業が顧客との信頼関係を築き、競争力を強化する戦略と言えます。
グリーンブランドは企業が社会的課題に対する責任を果たし、サステナビリティな未来に貢献するための重要な手段です。最近では、気候変動への対応や資源の枯渇、生物多様性の損失など、増え続ける地球規模の課題に対し、企業がどのようにこれらの課題に対応し、同時に事業を繁栄させるかが問われています。そして、その答えの一つが、まさにグリーンブランドなのです。
日本におけるグリーンブランドの認知度の現状
しかし、このグリーンブランドの概念は、まだ日本ではそれほど一般的ではありません。(Wikipediaに日本語の説明がないことからも、それがうかがえます)
今後グリーンブランドが持つ力と可能性をフルに活用するためには、まず認知と理解を広める必要があるでしょう。
ブランディングとサステナビリティを切り離して考えるべきではない理由
ブランディングは、企業のイメージを形成し、顧客の認知や行動を左右する重要な要素です。一方で、サステナビリティは、企業が長期的な成功を達成し、社会や環境に対する責任を果たすための重要な原則です。一見、まったく別のもののように感じますが、実際には密接に関連しています。
顧客からの信頼とロイヤリティを得られる
ブランディングにおける最終的な目標は、ブランドの価値を高め、顧客との強い絆をつくることです。そのためには、企業の価値観やビジョン、行動が顧客の期待やニーズと一致することが重要です。
顧客は単に製品やサービスの品質だけでなく、企業が環境に配慮しているか、社会的な責任を果たしているかにも強い関心を持っています。したがって、サステナビリティは、ブランド価値を高め、顧客の信頼とロイヤルティを獲得するための重要な要素となります。
先に取り上げたANAは、サステナブルな航空燃料(SAF)を使用したグリーンジェットの運航を通じて、環境に配慮したブランドイメージを確立しています。このような取り組みは、航空会社が及ぼす環境への影響について顧客に考えてもらうことで、顧客自身の行動を見直すきっかけを提供しています。さらに、このエコフレンドリーな取り組みは、ANAのブランドイメージを強化し、顧客からの信頼を高める役割も果たしています。
参考:ANA Green Jet
ブランド選びにおけるサステナビリティの影響力が拡大
また、若い世代、特にミレニアル世代やZ世代の間では、就職先を選ぶ基準としてサステナビリティが重要な要素となっています。Z世代が企業を見定める価値基準 | GLOBIS 知見録では、その様子を「Z世代はSDGsネイティブ」という言葉を使い表現しています。
また、イマドキの新卒採用~若者のSDGsへの関心~ – りそなBiz Actionによると、2022年卒の学生を対象とした調査では、「就職活動における企業選びで、SDGsに関する取り組みや社会貢献活動を意識するか」という設問に対して、16.4%が「意識する」、35.0%が「どちらかと言えば意識する」と回答し、合わせて半数以上がSDGsを意識していることが明らかになりました。サステナビリティは、企業のリクルーティング活動でも重要視すべき項目になってきています。
私たちがブランディングで携わる企業も、サステナビリティを意識されてることが増えました。Webサイト上(リクルートサイト以外でも)での発信という事例も増えてきており、世の中の意識の変化を実感しています。
グリーンブランドを構築する際の具体的なステップ
では、実際にグリーンブランドを構築するためには、どのような手順が必要なのでしょうか?
1.サスティナビリティを企業戦略に取り込み、実行する
はじめに、サステナビリティを企業戦略の中心に位置づけ、それを組織全体の行動原則とすることが求められます。これは、サステナビリティを考慮した製品開発やサービス提供、そして環境負荷の低減を目指す企業活動を推進するための最初のステップです。具体的な行動計画をつくり、それを社内外に明確に伝え、そして実行に移すことが重要となります。
2.サスティナビリティな取り組みを顧客に伝える
次に、そのようなサステナビリティな取り組みを顧客に効果的に伝える戦略が必要です。そのためには、顧客のサステナビリティを重視する価値観を理解し、その価値観に基づいたメッセージングを行うことが求められます。また、Webサイトでサステナビリティな取り組みを積極的に伝えることも効果的です。これはグリーンブランドを構築するための重要なステップであり、顧客にあなたのブランドを選ぶ理由を提供し、あなたのブランドの価値を高めることができます。
3.サスティナビリティを未来に向けたビジョンとして捉える
そして最後に、サステナビリティを一時的なトレンドとしてではなく、長期的なビジョンとして位置づけることが大切です。企業が真剣に取り組むべきなのは、短期的な利益追求ではなく、持続可能な未来に向けた長期的な戦略です。それが真のサステナビリティであり、それが真のグリーンブランドをつくりあげる原動力となるのです。企業が社会的、環境的、経済的な価値を創造するための根本的な原則であり、企業の長期的な成功に不可欠な要素です。
グリーンブランドの力とその将来性
ANAの”グリーンジェット”の事例を通じて、グリーンブランドがどのようにして企業のブランド価値を高め、顧客との関係を深めているのかを理解することができました。グリーンブランドは、企業が環境に対する責任を全うし、それを顧客に伝える重要な手段となっています。持続可能性とブランディングを一体化することで、企業は価値を高め、より多くの顧客層に訴えることができます。
今後、ますます多くの企業がグリーンブランドを採用し、その価値を顧客に伝えていくようになるでしょう。その中で、自社のブランドをどのように位置づけ、その価値をどのように伝えていくのかは、企業の成功を左右する重要な要素となります。
このように、グリーンブランドは単なるトレンドではなく、これからの企業経営において重要な戦略となっています。その力を理解し、それを適切に活用することで、企業は持続可能な未来を築くことができるのです。