「バカリズム脚本=共感×違和感」- 視聴者を虜にする唯一無二のブランド戦略
芸人にとどまらず、役者やイラスト、そして脚本家としても多彩に活躍しているバカリズム。その手がける作品は、放送されるたびに話題になり、多くの視聴者を惹きつけています。
一見すると静かで地味な物語のように見えるのに、いつの間にか引き込まれ、ふとしたセリフに「あ、わかる」と共感し、次の瞬間には絶妙な”ズレ”に笑わされる。そんな体験に私自身も心をつかまれ、いつの間にかファンになっていました。
今回は、「バカリズム脚本がなぜこれほどまでに人の心をつかむのか?」を分析しながら、ブランドづくりのヒントを学んでいきたいと思います。
普遍的な舞台と異様な設定—バカリズムワールドの方程式
バカリズム作品の最大の魅力は、平凡な日常に突飛な非現実を違和感なく溶け込ませている点にあります。
たとえば最新作『ホットスポット』では、富士山の麓にある地方ビジネスホテルを舞台に、シングルマザーと宇宙人、そしてその友人たちが日常の中で奇妙で不思議な交流を繰り広げる物語です。宇宙人が私たちと同じように仕事をし、暮らしているという突飛な設定を、日常の延長線上として描いています。
『素敵な選TAXI』では、タクシーという誰もが利用する移動空間で「過去に戻れる」という設定を展開し、『ブラッシュアップライフ』では地元の市役所で働く実家住まいの平凡な独身女性の主人公・近藤麻美が、輪廻を繰り返しながら、人生を少しづつ良くしてく物語でした。
いずれの作品も、「普通ではあり得ないことをあたかも普通であるかのように大真面目にやる」ことで、視聴者に新鮮な驚きを与えながらも不思議と受け入れられる世界を創造しています。この「普遍×異様」という方程式こそが、軸となり「バカリズムらしさ」を生み出しているのだと思います。
「らしさ」を生む、“ゆるくて鋭い”会話設計
バカリズム脚本のもう一つの魅力として、まるで日常の一コマを覗いているかのような自然な会話劇があります。登場人物たちは日常的なやりとりの中で唐突な持論を展開したり、微妙にズレた言葉選びをしたりすることで、視聴者の笑いと共感を誘います。この“引っかかり”のある会話は、ブランドにおける「差別化」のような役割を果たし、ただ共感されるだけでなく、記憶として残る存在感を生み出しています。
たとえば『ホットスポット』では、宇宙人が登場するという非現実的な設定にもかかわらず、その存在が淡々と受け入れられています。また、登場人物たちの会話には、地元ネタや仕事の愚痴の中で、誰もが心のどこかで感じていた“あるある”が各所に散りばめられています。ツッコミ不在のままゆるやかに進む会話や、心の声と建前が交差する描写が、キャラクターに深みを与えています。このような“ゆるくて鋭い”会話があるからこそ、物語の中の登場人物に感情移入でき、リアルな人間像が浮かび上がってくるのだと思います。
バカリズム脚本は会話の中にも「らしさ」を巧みに織り込むことで、視聴者の心をつかむ会話劇を生み出していると思います。
予測不能な展開と伏線回収
バカリズム脚本の特徴のひとつに、予測できない展開と緻密な伏線回収があります。物語の初期から丁寧に張り巡らされた伏線が、最終回に向けて自然に回収されていく構造は、実に見事です。
例えば、『ブラッシュアップライフ』では、第1話で主人公たちが交わした「ポケベル」に関する何気ない会話が、2周目の人生で友人の父親の不倫を未然に防ぐ作戦へとつながっていきます。保育園児の麻美がポケベルを使いこなす場面や、電話ボックスの位置、父のへそくりの隠し場所など、1周目の人生で得た情報が、2周目の人生に活かされ、巧みに伏線が回収されていくのです。
日常会話や小道具に自然に伏線を忍ばせ、それを終盤で一気に回収することで、驚きや笑いを生み出しています。この構成力こそが、バカリズム脚本の大きな魅力です。さらに、あえて回収しない伏線や、視聴者の深読みを逆手に取るようなミスリードも多用されており、その遊び心にも芸人バカリズムらしさが表れています。
何気ないシーンにもしっかりと意味がある。だからこそ、視聴後にはもう一度見返したくなる、後を引く魅力があるのだと思います。
バカリズム作品に学ぶブランディングの本質
バカリズム脚本に共通する点としては、日常の共感と少しの違和感を絶妙に掛け合わせた“ブレない世界観”にあります。舞台が変わっても、どの作品にも一貫した「らしさ」があり、それが視聴者を惹きつけ、ファンを生み出しています。これはブランドづくりにも通じます。伝える要素が変わっても、軸がぶれなければ、ブランドとしての信頼と愛着が育まれていきます。バカリズムのように、細部にまで自分らしさを宿らせることで、ただの“情報”が“記憶”となり、やがて“共感されるブランド”になるのだと思います。
私たちは、戦略的にファンを育てていくブランディング会社です。ブランドの根幹となる「らしさ」を見つけ、それを表現し続けるための言葉やデザイン、体験設計をお手伝いしています。私たちと一緒に、ファンに長く愛されるブランドを育ててみませんか?
サムネイル引用元
・バカリズム脚本&主演『劇場版 殺意の道程』インタビュー「サスペンスドラマの無駄なシーンこそ描きたいと思った」 | ガジェット通信 GetNews