アルティアムで開催中!「東欧アニメーションの世界」の不思議な魅力
SWINGSではこれまでも『ダンスミュージックとしてのアニソンパーティ“アニスプ”』や、『オランダで愛され続けているアニメ「あひるのクワック」』といったアニメに関連する記事をお届けしてきましたが、今回は福岡・天神のイムズ8階にある「アートギャラリー アルティアム」にて現在開催中の「東欧アニメーションの世界 −ポーランド・チェコ・クロアチア−」をご紹介します。
魅力的な東欧アニメーションの世界
一見すると可愛いキャラクターが伝える風刺や教訓、美しさの中に込められた孤独や不安など、東欧のアニメーションは全体的に寂しげなイメージがありますが、それには東欧の歴史が関係していました。
戦争、政治体制の転換、そしてグローバル化という激動を経験した東欧の歴史が根底にあり、どの作品にもその歴史が色濃く映し出されています。
本展は東欧の中でもチェコ・クロアチア・ポーランドの3カ国にスポットを当て、チェコとクロアチアの作品はアニメーションが上映されているほか実際に撮影に使用した人形や原画が展示され、またポーランドの作品は最新のものを交えたアニメーションが上映されています。
世界的に評価の高いチェコアニメ
人形アニメで有名なチェコアニメは、その芸術性の高さや叙情力、優しい表現力が世界で高く評価され、カンヌやベネツィアなどの国際映画祭で多くの賞を受賞しています。“東のディズニー”と呼ばれるほどなのだとか。
チェコでレベルの高いアニメーションが生まれるようになった背景には、共産主義が関係しています。
共産主義の時代には様々な表現が厳しく規制されていましたが、子供向けアニメーションだけは比較的自由に創作できました。そこで表現に飢えていたあらゆるジャンルのアーティストたちが集まり、チェコのアニメーションは高く評価されるようになったのです。
70年代から今まで、チェコの子供達が寝る前に見るおやすみアニメ「アマールカ」は、本展では展示されていませんが、最近日本でもグッズ化され注目を集めています。
シュルレアリスム(シュール)の表現としてのクレイ・アニメーションによって独自の世界観を確立したヤン・シュヴァンクマイエルは、チェコアニメの伝統を無視し、独自の手法にこだわりどんな枠にも収まらない異端児的な存在ですが、彼の作品は一度見たら忘れられない不思議な魅力に溢れ、CGを使わないアナログな表現・技法は世界中のアーティストに影響を与えています。
大人向けのクロアチアアニメ
クロアチアの首都ザグレブのスタジオ「ザグレブ・フィルム」は、第二次世界大戦後に新聞漫画家や画家が集まってアニメーションを作り始めました。
海外で初めてアカデミー賞短編アニメーション部門を受賞したデュシャン・ヴコティチ監督の「エアザッツ(代用品)」に見られるように、クロアチアの初期のアニメーションはシンプルなグラフィックと効果的な動きや音により、風刺や社会的な思想を込めた内容を軽快に表現しています。
沢山のアニメーションの中に決まった音楽監督が数人いることで、それぞれの作品に合わせて制作されるアニメーション音楽にも定評があります。
主に大人向けに作られているというのも特徴で、最近ではそれが逆に子供にウケているようです。
世界に活動を広げるポーランドアニメ
ポーランドのウッチに拠点を置く「セ・マ・フォル」は、このYouTubeのアニメーション「ピーターと狼」を含む2作で、2度のアカデミー賞を受賞したヨーロッパで最も歴史のあるアニメーション・スタジオのひとつです。
人形によるストップモーション・アニメーション制作を得意としているポーランドアニメの監督たちは、近年では日本を含む海外のアニメーション制作でも幅広く活躍しています。
本展では1950年から近年にかけての作品を通して人形アニメの表現の豊かさを紹介しています。
盛り沢山の関連イベント
展示期間中、アルティアム展示室内では、作品をまとめて見られる「イッキ見上映会」が毎週土曜日に行われ、またイムズ11階のデジタルハリウッド福岡校では、福岡でアニメーションを制作しているクリエイターをゲストに迎えたトークショーが行われるなど、関連イベントも企画されています。
関連イベントの詳細はコチラをご覧くださいね。
東欧アニメーションの世界 −ポーランド・チェコ・クロアチア−
会場:三菱地所アルティアム 天神イムズ8F
会期:5/23(土)− 6/28(日)※休館日6/16(火)
開館時間:10:00 − 20:00
入場料:一般400円 学生300円 ※再入場可