BtoB企業におけるブランディングの重要性と成功の秘訣、おすすめの書籍も紹介

競合他社との差別化が難しいBtoB企業にとって、ブランディングは、価格競争からの脱却や新規顧客獲得、人手不足解消など多くのメリットをもたらします。BtoB企業が自社製品やサービスを訴求していくうえで、ブランディングは欠かせないものであると言えるでしょう。この記事では、BtoB企業に向けて、ブランディングの基礎から手法・効果までをわかりやすく説明します。

 

BtoB企業のブランディングの概要

ブランディングと聞くと、一般消費者を対象としたBtoC企業がおこなう取り組みを思い浮かべる方が多いのではないのでしょうか。これに対して、BtoB企業がおこなうブランディングでは、企業担当者を始めとするステークホルダー(利害関係者)や社会に向けた取り組みです。

企業にどんな技術力があっても、その技術や製品・サービスを売り込むことができなければ、市場を牽引することはできません。市場を牽引できなければ、市場内での価格競争に陥ってしまい収益力が低下してしまいます。BtoB企業もブランディングを行うことで、自社製品やサービスを適切にアピールし、過度な価格競争や企業存続の危機に陥ることを回避することが可能です。

そもそもブランディングとは

「ブランディング」という言葉の意味は広範にわたり、その解釈は人によってさまざまです。ブランコではブランディングを、”ブランドの本当の価値をユーザーに伝わる形にすること”と定義しています。ブランドの本当の価値とは、見た目や表層だけにとどまらない、ブランドが持つ理念や姿勢、社会的役割など、そのブランドの存在意義そのものを指します。

そのために、ブランディングはブランドの特徴、競合する企業との違いを明らかにし、一貫したメッセージ・コミュニケーションでブランドやサービスの本当の価値をきちんと伝えていくことが大切です。ブランドの持っている「らしさ」や特徴と、ユーザーがブランドに対して持っているブランドイメージをコミュニケーションで合致させていく必要があります。

ブランディングについて更に詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

 

ブランディングで解決できるBtoB企業の課題

では、なぜBtoB企業にブランディングが必要なのでしょうか。ここでは現在BtoB企業が直面している課題と、その解決策としてブランディングが有効な理由について解説します。

新規顧客の獲得

ブランディングをすることで、BtoC企業と同様に、新規顧客の獲得が見込めます。日本経済の成熟化が進むにつれ、多くの企業が海外に活路を見出しています。その結果、長らく日本企業の強みであった系列取引の崩壊をもたらしました。この流れを受け、質や機能が良ければ、系列外はもちろん世界規模での取引調達が当たり前の時代に変容してきました。

こういった事情から、今の時代は競合との差別化が特に重要性を増しています。その点、企業そのもののブランディングが成功し、ターゲットにとって魅力的な企業と判断されれば、顧客候補として認識されることが可能です。特にBtoB企業の中には、取引先が一社しかないという「一社依存」の企業も存在するでしょう。そうしたBtoB企業にとって、ブランディングは存続のために欠かせない施策の一つと言えます。

価格競争からの脱却

価格競争から脱却するためにも、競争に巻き込まれている企業や、競合が多い業界に位置する企業はブランディングが必要です。BtoB企業をとりまく市場は、多くの場合価格競争が激しい傾向にあります。ブランディングで競合との差別化を図れれば、価格面以外での競合優位性を保つことが可能です。自社商品やサービスを安売りせずにすむのは、どの企業にとっても非常にメリットが大きいでしょう。

人手不足の解消・予防

現在多くの業界において深刻な人手不足が叫ばれています。既に人手不足を懸念している企業はもちろんのこと、今は人手不足を他人事に感じている企業でも、人材確保は決して軽視できないポイントです。

BtoB企業の意義や使命、あるいは社会的影響力が理解されることで、商品・サービスへの期待値が高まり、企業イメージも向上します。企業の方針に賛同した人材からの応募や企業のイメージ戦略の結果として、人材確保も容易になるでしょう。

 

ブランディングがもたらす効果

ここまで、BtoB企業にブランディングが求められる背景について解説してきました。ここでは、BtoB企業のブランディングについて、主なメリットを改めて整理してみましょう。

社内の求心力が高まる

ブランディングによって、すべての社員が目指す方向を共有し、同じ方向へ進む環境を創ることができます。ブランディングを通じて社内コミュニケーションの大幅な強化を図るため、商品企画やプロモーション、接客などの具体的な施策づくりなどについて、ブランド価値に基づいた一貫した判断が可能です。

市場における競争力を強化できる

ブランディングの結果として、市場内での競争力が高まります。グローバル化の進行やITの標準化によって、市場にサービスやモノが氾濫している現状では、価格や機能だけでは他社との差をつけづらい状況です。そこで、たとえば「シャネル=高級ブランド」のような、企業・商材と特定イメージが紐付いた認知を獲得することは、価格・機能以外の差別化を図るうえで有効です。これにより、ブランドの構築・市場競争力の向上を図れるでしょう。

企業イメージの向上に繋がる

企業イメージの向上は経営において非常に重要です。イメージを向上させれば自ずと他社との差別化が図れ、売上面においても人材確保の面においても強みを発揮することができます。企業イメージの向上による知名度の拡大や訴求ポイントの強化は、長期的に安定した経営を行ううえで欠かせないでしょう。

 

BtoB企業のブランディングの進め方

基本的にはBtoB企業であっても、BtoC企業であっても、ブランディングの進め方に違いはありません。次の6つのステップで進めていきます。

  1. ブランドの強みを理解・整理・定義する
  2. ブランドにかかわるユーザーのニーズを知り分類する
  3. ユーザーの選択と集中をおこなう
  4. 選択したユーザーへ届けられる価値を考える
  5. 仮説を立て戦い方を決める
  6. データ検証を行う

気をつけるポイントは、BtoC企業ではブランドと直接コミュニケーションを取るユーザーが購入の意思決定者になりますが、BtoB企業だとコミュニケーションを取るユーザーが購入の意思決定者ではない場合が多く、認知してから購入までのプロセスが複雑な場合が多いです。そのため、先述した6つのステップをより注意深く、詳細に実施する必要があります。

 

BtoB企業のブランディング成功事例

ブランディングを成功させる術を学ぶには、既にある成功事例を参考にするのが早道です。ここではBtoB企業のブランディングの成功事例をご紹介します。

IBM

IBMは、ソリューションに対するブランディングとして「コグニティブ・コンピューティング」を提唱しており、自社の人工知能である「Watson」の売上につなげました。コグニティブ・コンピューティングとは、従来のコンピュータが行ってきた「定形処理の効率化」「解釈」「判断」までを一貫して担う仕組みです。ブランディングの結果、このシステムへの理解が深まり、コグニティブ・コンピューティングを実現する自社製品「Watson」が比例して売れる構図が作り上げられています。

ドルビーラボラトリーズ

ノイズ低減技術をライセンス販売するドルビーラボラトリーズは、自社の技術を使用した製品に商標表示をし、製品品質イメージを高く維持する取り組みを行ってきました。その結果、同社の商標は「高音質を保証するシンボル」として一般消費者に広く認知されています。認知自体が商標の入った製品の売上を後押しするため、自社のライセンス収入もより多く得られるようになりました。

Sales force

Salesforceは、企業が顧客情報を一元管理できるよう支援している企業であり、顧客のマーケティング支援だけでなく、自社のブランディングにも力を入れています。「Trust(信頼)」、「Customer Success(カスタマーサクセス)」、「Innovation(イノベーション)」、「Equality(平等)」という4つのコアバリューを大切にしていることや、社員・顧客・そしてパートナーのコミュニティを「Trailblazer」と呼ぶなど、他社にはない文化を根付かせています。社内外へのアプローチを続けることで、事業拡大はもちろん、Fortune誌の「働きがいのある会社」に11年連続でランクインするなど、様々な成績を収めています。

Adobe

Adobeは、グラフィックデザイン、映像編集、マーケティング分野で広く知られる世界的な企業で、デザインやイラストレーションで使われる標準ソフトウェア「Photoshop」や、「Illustrator」をはじめとする優れた製品群で知られています。「Creativity for All(すべての人にクリエイティブな表現を)」というビジョンを掲げ、その言葉通り世界中のクリエイターやマーケターにとって必要不可欠な製品を提供し、多くの人々の創造性と生産性を向上させることに注力しています。AdobeもFortune誌の「働きたい企業ベスト100」に22年連続ランクインするなど、強力なブランドを築き上げています。

 

BtoB企業のブランディングに関するおすすめ本

ここまで、BtoB企業のブランディングの必要性や効果について解説してきました。ここでは最後に、さらに詳しくブランディングについて学びたいという方に向けて、弊社内でも課題図書として扱っているおすすめの書籍を紹介します。

「ブランディング7つの原則 2版: 成長企業の世界標準ノウハウ」インターブランドジャパン(著)

著者であるインターブランドは1974年にロンドンで設立された世界最大のブランディング会社です。ブランディングについて基本的な内容から実践的なフレームワークまで、この書籍にはブランディングのすべてが詰まっています。ブランディングについて表面ではなく本質から学びたい方におすすめです。

「事例で学ぶブランディング ランドーのデザイン戦略大公開」ランドーアソシエイツ(著)

著者であるランドーアソシエイツは、世界19か国に43拠点を持つブランディング会社です。オリンピックのエンブレムや世界的に知られる有名企業の仕事を手がけています。そんなランドーアソシエイツが東京オフィスで手がけた国内外の実例を見ながら、成功したブランディングのプロセスを詳しく学ぶことができます。

 

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BtoB市場でも、BtoCと同じく自社サービス・製品が選ばれるには独自の強みを知ってもらう必要があります。その企業にしか出せない価値の認識が顧客に広まることで、自社を選んでもらえる確率が高まるでしょう。BtoB企業のブランディングの重要度は年々増していますが、実際に構築する際は、企業・製品・サービスなどが持つ特性や実績の十分な検証が肝要です。

この記事でご紹介したようなポイントを踏まえて、ブランディングを成功させビジネスの好循環を築いていただければと思います。ご質問・ご相談等ありましたら、お気軽にお声がけください。

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