“モノ語り”を未来へ繋ぐ「日本磁器誕生・有田焼創業400年 ~ 400年 有田の魅力展」

美しく透きとおるような白磁の焼き物、有田焼。

有田焼誕生から今年でちょうど400年を迎え、さらなる進化を続ける有田焼のこれまでとこれからを辿る「日本磁器誕生・有田焼創業400年 ~ 400年 有田の魅力展」が、3月9日(水)〜14日(月)に福岡三越9階の三越ギャラリーにて開催されています。

現代版「おてしょ皿」

企画が盛りだくさんな本展の中でも特におすすめしたいのは、現代版の「おてしょ皿」。

おてしょ皿とは、室町時代京都の朝廷の食卓で手元に塩を盛る器として使われたということから、“手塩皿(おてしょ皿)”と名付けられたそうです。

元となった江戸時代のおてしょ皿

元となった江戸時代のおてしょ皿

江戸時代以降有田焼でも多くつくられたおてしょ皿は、約11cmという大きさの中に、形や絵付、装飾といった技術の粋が凝らされているため人気の一品です。

13種類の型にさまざまな絵付が施されています。

13種類の型にさまざまな絵付が施されています。

本展で展示販売される現代版おてしょ皿は、世界でも類をみない陶磁器コレクションとされる「柴田夫妻コレクション」の中から、厳選した江戸時代のおてしょ皿13種類を3Dプリンターで忠実に再現し、若手の窯元が絵付を施したもの。

時代を超えて現代のライフスタイルにおてしょ皿を提案する、面白い試みです。

400年の歴史を辿る

特別展示コーナーでは、江戸期から現代にかけて各時代で多く生産されたヒット商品約100点を通して400年の有田焼の歴史を辿ります。

こちらが髭剃り皿。くぼみ部分に顔を当てて髭をそったそうです。

こちらが髭剃り皿。くぼみ部分に顔を当てて髭をそったそうです。

例えば、初期の絵付は藍色一色だったことや、そこからカラフルで華美な絵付に変化していくさま。

中国が戦争をはじめたことをきっかけに、それまで中国から輸入していた陶磁器を中国の代わりに有田から輸入しようとしたオランダの東インド会社により、有田焼はヨーロッパ各地に広がり、それに伴い海外からの依頼で髭剃り皿のような一風変わった形のものが増えたこと。

明治時代頃万博へ出展していた頃は絵付も洋風に変わっていったことなど、そのときどきの時代を感じる有田焼の変遷が楽しめます。

また、国内外で有田焼の人気が高まるにつれ、ろくろでの生産が間に合わず、木型をつくり型をとってつくった変形皿も生まれました。先ほどご紹介した“おてしょ皿”も変形皿のひとつです。

有田焼全体を盛り上げていくという思い

有田焼に使用される白い陶石が初めて発見された泉山の写真が壁面に。

有田焼に使用される白い陶石が初めて発見された泉山の写真が壁面に。

ほかにも、人間国宝の先生方による作品展や、職人や伝統工芸士によるろくろ成形・下絵付け・上絵付けの実演が行われる「有田焼工房再現」、上絵付け体験ができるワークショップ、ハニー珈琲と有田焼がコラボレーションした「有田CAFE」では、50客もの有田焼カップ&ソーサーの中から好みのカップでコーヒーを飲むことができるなど、盛りだくさんの展示となっています。

1客4万〜5万円はするという名釜柿右衛門釜のカップ&ソーサー

1客4万〜5万円はするという名釜柿右衛門釜のカップ&ソーサー。

実際展示を拝見して、400年という大きな節目を迎えたこと、そして各窯元の垣根を超えてこれからの有田焼をもっと盛り上げていきたいという強い意気込みを感じました。

インスタントラーメンを美味しく食べるために生まれたラーメン専用どんぶり。

インスタントラーメンを美味しく食べるために生まれたラーメン専用どんぶり。

伝統を重んじるだけでなく、伝統の枠にとらわれないさまざまな取り組みがあり、これまで有田焼に対して持っていた“高級品”で“保守的”というイメージはいい意味で裏切られたように思います。

特別展示の歴史的な作品以外はすべて購入可能な展示販売となっていますので、気になるものがあれば是非手にとってみてくださいね。

Related Posts