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ISSEY MIYAKEは、なぜ服をつくったあとの紙を展示したのか

ISSEY MIYAKEは、なぜ服をつくったあとの紙を展示したのか

服をつくる途中で使われ、完成した服には残らない紙があります。

プリーツ加工の際、生地を守るために一緒に機械へ通される薄い紙です。役目を終えれば圧縮され、廃棄やリサイクルへ回されます。ISSEY MIYAKEは、その紙を椅子やオブジェへ変え、2026年のミラノデザインウィークで『The Paper Log: Shell and Core』として展示しました。

廃材に新しい用途を与えた、環境配慮のプロジェクト。最初はそう見えます。ただ、実際の展示には完成した作品だけでなく、家具のプロトタイプや制作中の対話を記録した映像まで並んでいました。廃紙が椅子になったことを伝えるだけなら、なぜ途中の試作まで見せたのでしょうか。

服をつくる紙が、捨てるときに丸太になった

ISSEY MIYAKEの製品プリーツは、先に布へひだをつける一般的な方法とは順序が異なり、生地を服の形へ裁断して縫い、その後、紙で挟んでプリーツマシンへ通します。

アイテムのご紹介「AZURE COLORS」 – isseymiyake.com
アイテムのご紹介「AZURE COLORS」 – isseymiyake.com

 

使い終えた紙は、運びやすく、廃棄やリサイクルをしやすくするために圧縮されます。すると、高さ約80センチ、直径約40センチの円柱になる。木の幹に似た姿から、Paper Logと名づけられました。

Paper Logの形や模様は、展示のためにつくられたものではありません。服を加工し、その紙を捨てやすくした結果、偶然そこに残ったものです。では、その偶然の塊を、ISSEY MIYAKEは何に使おうとしたのでしょう。

最初にできたのは、一脚のスツールだった

三宅デザイン事務所の近藤悟史さんは、工場でPaper Logを見たとき、その円柱形と独特の質感に可能性を見いだしました。ロールを切ってスツールを制作し、パリで発表されたISSEY MIYAKE 2025年春夏コレクションの会場で、実際に座席として使用しています。

SPRING SUMMER 2025 COLLECTION – isseymiyake.com
SPRING SUMMER 2025 COLLECTION – isseymiyake.com

 

服づくりの副産物が、人の体重を支える家具になった。廃紙の再利用として見れば、ここで話は完結します。

ところが、スツールができた後も、紙への実験は続きました。Paper Logを蝋に浸す。糊で固める。切る。束ねる。あるいは、外側の紙を剥ぎ、広げ、別の物を包む。椅子をより完成させるための改良というより、同じロールへ別の触れ方を試していったのです。

重く、頑丈なCore。薄く、儚いShell。

実験は、正反対の二つの作品群へ分かれていきました。

ISSEY MIYAKEのチームが制作したCoreは、Paper Logの中心部を使った家具のプロトタイプです。圧縮された紙を蝋に浸したり、糊で固めたりして、その密度と強さを生かしています。

一方、協働したスペインの建築事務所Ensamble StudioによるShellは、ロールの外側から剥がした紙でつくられました。薄い紙を自由に形づくり、物へかぶせて固める。服の加工で刻まれたひだやしわが、そのまま表面に残ります。同じPaper Logでも、中心を切れば人を支える塊になり、外側を剥がせば形を包む膜になります。

ISSEY MIYAKE / MILAN 特別展「The Paper Log: Shell and Core(ザ・ペーパーログ:膜と核)」開 – isseymiyake.com
ISSEY MIYAKE / MILAN 特別展「The Paper Log: Shell and Core(ザ・ペーパーログ:膜と核)」開 – isseymiyake.com

作品の隣に、試作と対話が置かれた

Ensamble Studioは、このプロジェクトについて次のように記しています。

The work presented here is less a finished object than an ongoing inquiry—an attempt to read the story already written into a material and to imagine how that story might continue in another form.

ここで示されているのは、完成した物というより、今も続く探究です。素材にすでに書き込まれた物語を読み、それが別の形でどう続きうるかを想像する試みなのです。(筆者訳)

Ensamble Studio「Issey Miyake - The Paper Log: Shell & Core」

会場にはShellとCoreだけでなく、プロトタイプの制作過程や、両チームの対話を記録した映像も置かれました。

ShellとCoreを並べると、一つの紙に相反する性質があると分かる。さらに試作と対話を見ることで、その性質が最初から設計されていたのではなく、切り、剥がし、固める中で見つかったことまで辿れます。

新しさは、形より先に「見方」から生まれる

新しいデザインというと、まだ見たことのない形を生み出すことを想像します。しかしPaper Logでは、最初に新しい形があったわけではありません。すでに工場にあった紙を、廃棄物ではなく、ひだや密度を持つ物として見直すところから始まっています。

CoreとShellが生まれたのも、その見方が変わったからです。圧縮された中心は強さとして、剥がした外側は薄さとして扱える。同じ物でも、どの特徴を見るかによって、次につくる形は変わります。

デザインの新しさは、何をつくったかだけでは判断できません。それまで同じように見えていた物から、何を見つけ直したのか。ISSEY MIYAKEが展示したのは作品だけでなく、新しい形が生まれる前に起きた、その視点の変化だったのです。

 

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