大人気地域密着型イベントの仕掛け人に学ぶ!「グッドネイバーズ・ミーティング福岡」

毎年夏の終わりに、鹿児島にある廃校になった小学校を舞台に開催される、クロスカルチャーな参加型野外フェスティバル「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE(グッドネイバーズ・ジャンボリー)」。

音楽、アート、カルチャー、映画、文学、食など、ジャンルを超えたクリエイティブを森の中で満喫する、大人と子どもの夏休みのためのイベントです。

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本イベントの主宰であり、“良き隣人たち”とともにローカルコミュニティの可能性を切り開いてきた坂口 修一郎さんと、聞き手にフリーランスの編集者 伊藤総研さんを迎えて、7月10日(日)に福岡で開催されたトークイベント「グッドネイバーズ・ミーティング福岡」。

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県外からも毎年たくさんの人が集まり、みんなでつくり上げる参加型のイベントの誕生したきっかけや継続の秘訣など、濃い話満載のイベントの模様を一部抜粋してお届けします。

7年も継続する秘訣

伊藤 グッドネイバーズ・ジャンボリーは今年で何回目の開催になりますか。

坂口 今年で7回目ですね。

伊藤 最初にイベントをやろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか。

坂口 僕は東京でずっと音楽活動をしていて、「DOUBLE FAMOUS」というマーチングバンドのトランペットを担当していて、日本全国のフェスに出たりしていました。

30代後半の頃は、地元の鹿児島で何かできることはないかとちょうど考えだした時期で、ものづくりをするわけでもないし、お店を出したりするわけでもないので、自分でできる音楽を楽しむような場所をつくろうと思ったんです。

その時に1番手っ取り早かったのがフェスで、2010年に第1回目のグッドネイバーズ・ジャンボリーを開催しました。

伊藤 その頃は地域でのフェスがまだあまりない頃ですよね。

坂口 そうですね。福岡は「Sunset Live」という日本に誇る素晴らしいフェスがありますが、今は小さいものも含めると、日本全国で500弱のフェスがあるといわれています。

伊藤 でも正直なところ、始まってもすぐになくなってしまうものもありますよね。

坂口 話を聞いていると、なかなか3回以上続かないようですね。

伊藤 継続していくためには何が1番大変なんでしょうか。

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坂口 僕らもフェスをやっているのでそういう相談もよく受けるんです。続かない理由にはお金の問題もあるし、人の問題もあります。

1回目は皆熱い思いで立ち上げて、手弁当で頑張るぞーとやるんだけれども、色々なことがわからないので大体赤字になるんです。野外でやることの様々なリスクや、広報の仕方がわからず過剰に予算を使ってしまったり。

こういうイベントは定着するまでに3年位かかると思うんですが、開催するには結構な労力が必要な上に、回を重ねるごとに皆の熱がどんどん冷めていってしまうので、旗振り役が的確に仕切らないと続けるのは難しいと思います。

フェスをやろうとすると、コンテンツにしてもアーティストにしても色々な人を呼んでこないといけないので、人をブッキングし続けるにはそれなりにプロフェッショナルが必要になってきます。

それに加えて、コンセプトをどうしていくのかという軸の部分がブレ始めるとイベントが分解していく、という状況が見ていると多い印象ですね。

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伊藤 逆にグッドネイバーズ・ジャンボリーが継続できている理由は何だと思いますか。

坂口 ひとつ目はお金をどこからも貰っていないということ。補助金の類を一切貰っていないんですよ。

補助金ありきで始めると、それも別に悪いことではないんですが、補助金はずっと貰い続けられるものではないので、選挙などで何かが変わったりすると、自分たちの思惑と違うところで補助金がなくなってしまうことがあります。

僕らは入場料を頂いて、それで足りない分を出店料や複数の企業からの若干の協賛金だけでまかなっているので、物理的にその方が堅実なんです。

もうひとつは、実行委員とされている人たち皆に割り振っているそれぞれの役割が、うまい具合に適材適所に割り振られていること、鹿児島の人たちがお祭り好きということが続いている理由じゃないでしょうか。

伊藤 グッドネイバーズ・ジャンボリーを見ていると、毎年ボランティアの人たちが自発的に動き始めるという印象があります。それはイベントが7年も続いているからなのでしょうか。

坂口 毎年ボランティアスタッフを30~50人ほど募るんですが、意外にもその1/3は県外から来てくれています。

鹿児島のフェスなのに北海道から来てくれる方もいてすごく不思議に思っていたんですが、今は“物理的な距離”よりも“レイヤー”になっているのかなと感じます。

こうやって同じ空間にいても、このイベントに興味を持つ人もいれば興味を持たない人もいますよね。興味をもつ人は、福岡でも北海道でもアメリカでも、インターネットから情報を得て来てくれるので、距離は関係ないように感じます。

盛りだくさんのコンテンツ

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伊藤 グッドネイバーズ・ジャンボリーは、ローカルなものと外のもののコンテンツ的なバランスが、他のフェスとは違いますよね。

坂口 そうですね。“1品持ち寄りパーティ”のカルチャー版というか、文化祭のようなことができたら面白いなと最初から思っていたので、いまのような構成になっています。

たまたま僕は音楽ができましたが、器をつくっている人、絵を描いている人といったように、何かできる人がたくさんいるので、自分のできることで参加するという場所をつくりたかったんです。

一応僕は音楽というジャンルの出身ではあるけれども、ミュージシャンが絵描きより偉いということは絶対にないし、コンテンツの中にヒエラルキーのようなものはつくりたくないと思っています。

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伊藤 廃校になった小学校が舞台になっているので、校舎の中でいろいろなワークショップがあったり、映画の上映があったりと、ステージ上の音楽を聴かない人も居るわけですよね。そこに通常の音楽フェスとは違うあり方をすごく感じます。

坂口 フェスは、いわゆる音楽でいうところの“コンサート”とは違うんです。FUJI ROCK FESTIVALとかSunset Liveなどに行かれた方はわかると思いますが、いくつもステージがありますよね。

僕らも出演した時は、裏番組というか同じ時間に別のステージで誰かがライブをやっていたりするわけです。そういう時お客さんは面白い方に行ってしまうから、ほかに行かせないためにその場で頑張るということも必要だし、メインのアーティストを見に来たものの、全然知らなかったアーティストのライブに聴き入るといったことがあり得るわけです。

そんなひとつのきっかけになったら良いなと思うので、フェスにおいてコンテンツはたくさんあったほうが良いと考えています。

伊藤 グッドネイバーズ・ジャンボリーは飲食のレベルも高いですよね。恐らく僕がこれまで行ったフェスの中で一番美味しいお店が揃っているんじゃないかと思っています。

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坂口 そうかもしれないですね。僕もフェスには日本国内だけじゃなく海外にも行ったりしていますが、どうしても屋台というかテキ屋のような出店が多くなってしまいますよね。それが悪いとは思わないんですが、せっかく県外からもゲストが来てくれるので、鹿児島ならではの美味しいものを食べて欲しいと思っています。

グッドネイバーズ・ジャンボリーは7回目の開催ということで、その辺りも上手になってきて、飲食の出店者のメニューや食べ物の種類が被らないようにコントロールしています。

伊藤 お酒の種類もバランスがとれていますよね。

坂口 鹿児島は美味しい焼酎がいくらでもあるので、“酒”というと焼酎で、他のものはあまり知らないんですよ。ワインや日本酒といった世の中にたくさんある美味しいお酒を、鹿児島の人にも知ってほしいなと、美味しいお酒を持ってきてくれるお店を選んで、出店のお願いをしています。

ワインは、毎年東京の渋谷にあるワインバーの「アヒルストア」が持って来てくれるんですが、美味しすぎて困っているくらいですね。

7年目の今年から始めたこと

伊藤 日本酒やワインももちろんですが、焼酎の種類があれだけ潤沢にあるというのは鹿児島のフェスならではですよね。
今年はフェス7年目ということで、何か新たに始めることはありますか。

坂口 色々あるんですが、今年初めてグッズをつくりました!

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坂口 行く前も行った後も楽しくしたいということで、車に貼れるような大きめのステッカー、強い日差しから守ってくれるキャップ、フェスでのゴミを減らすためのコップ、汗をかいた時用のバンダナなど、フェスにまつわるグッズをたくさんつくりました。

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坂口 また、毎年フェスに向けて色々なアーティストと一緒にステージをつくるワークショップを行っているのですが、それだと鹿児島の方しか参加ができません。県外の方でも簡単に参加できるものは何かないかということで企画した、みんながフェスに行くためにやっている様々な準備を可視化してフェスまでの気分を盛り上げる、「グッドネイバーズ準備リー」も今年初めての試みです。

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Instagramに「#gnjamboree2016」のハッシュタグを付けて投稿された写真を、富士フィルム協力の元、チェキというフィルムにプリントアウトして、鹿児島のマルヤガーデンズにあるギャラリーに時系列で貼り出していきます。

例えば今日のイベントに参加して話を聞いてきたとか、こんなグッズを買ったとか、雨が降るかもしれないからレインコートを買ったとか、出店者の人だったら当日はこういうメニューにしようかなというような、イベントに関わることなら何でも良いんです。

イベント当日の8月20日に向かって写真がどんどん増えていき、みんなが準備して盛り上がってきたということが目で見えるのは楽しいかもしれないなぁと。

大分と熊本のために出来ること

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伊藤 グッズの中にある「KUMAMOTO & OITA」と入っているポスターいいですね、僕好きです。

坂口 “良き隣人”という意味の“グッドネイバーズ”というネーミングでずっと活動をしてきて、鹿児島の隣りである熊本と大分に地震が起きて、そういう時に何もしないでいるのはおかしいなと思い、僕らなりに出来ることは何かを色々と考えました。

1番やらないといけないことは、“常に忘れない”ということかなと思っています。いつもグッドネイバーズ・ジャンボリーのTシャツには「A BEAUTIFUL DAY IN KAGOSHIMA」という言葉が入ってるんですが、今年は「熊本と大分のために集まろう」という言葉が入っています。このTシャツを購入いただいた売上は、中央募金会に全額寄付をすることになっています。

このポスターは、熊本にある活版印刷所にお願いしてつくってもらったオリジナルのポスターです。活版でつくってあって、小さいですが「KUMAMOTO & OITA」と入っています。

まずは忘れない、ということ。熊本と大分に気持ちを持って行って、離れた場所にいる人にも今回の震災をもう少し身近に感じてもらおうと思って活動をしています。

伊藤 そういった、仕事をお願いすることって大事ですよね。

坂口 そうなんです。募金でお金を渡すということも大事だと思うんですが、仕事をお願いすると今後もずっと継続していく可能性があるわけですよね。

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坂口 フェスの実行委員の中に革職人がいるんですが、彼が、このポスターの活版にインクを付けずに革に刷ったら型押しになるんじゃないかというアイディアを出してくれて、フェスでは型押しをした革を使って財布をつくるワークショップをする予定です。

そうするとまた次の受注にも繋がるし、仕事の輪がどんどん広がっていったら面白いなと思っています。

動き続ける秘訣

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伊藤 僕と坂口くんはほぼ同い年なんですが、友人として見ていて彼の生き方は、感心するところがすごくあるんです。グッドネイバーズ・ジャンボリーが続いているということもあるし、さらに「OK SHOP」という被災地を支援するイベントも始めていますよね。動き方や自分の中の指針のようなもので、何か大事にしているものはあるんでしょうか。

坂口 あまり後先を考えないということじゃないでしょうか。何か新しいことを始めた時は、毎回ちょっと後悔するんです。また始めてしまったって。(笑)

毎回そう思うのになんで新しいことを始めるのかと言われたら、僕はもうすぐ45歳になるのもあり、焦りじゃないけど時間がないと思っているんですよね。まあ何歳でもいいんです。みんな時間ないんですよ。だから今のうちにやっておかなきゃとすごく思います。

1番の見どころ

伊藤 僕は大変な時期でも坂口くんはもっと大変だって思って頑張れます。(笑) 自分を奮い立たせる意味で、坂口くんの存在はありがたいです。
グッドネイバーズジャンボリーで県外からのアーティストを呼ぶのはいつも1組だけということですが、今回はなぜUAさんだったんでしょうか。

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坂口 UAさんは同い年なんです。彼女は東北の震災以降ほとんど活動していなくて、いつか鹿児島に来てよとずっと言っていたんですが、今年アルバムが出てライブもたくさんやるというので、やっと呼ぶことができました。

でも実は僕が1番見て欲しいのはUAさんじゃなくて、「otto & orabu」というアーティストです。鹿児島市にある知的障がい者施設「しょうぶ学園」の人たちによるバンドで、彼らだけ第1回のフェスからレギュラー出演しています。毎年1番盛り上がるアーティストになっています。

引用元:幸福は日々の中に。 公式サイト

引用元:幸福は日々の中に。 公式サイト

坂口 ちょうど彼らのドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」が今あちこちで公開されているんですが、5年くらい撮り続けていた中で1番盛り上がる演奏シーンはジャンボリーの時なんですよ。

なぜかというと、彼らはとにかく余計なことを考えないんですよね。誰でも人前に出て演奏すると少しは緊張するものですが、彼らは格好をつけたりしないので一切緊張もせず、観客の状況をそのまま写す鏡のような存在なんです。

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坂口 みんなが正座して聞いていると、彼らの演奏も大人しくなるし、1000人の人がすごいねってわーっと褒めるとものすごい力を発揮するので、彼らの演奏を1番いい状態で見れるのは間違いなくジャンボリーの時です。大橋トリオ、Ego-Wrappin、ハナレグミなど毎年1組呼んでいる県外からのアーティストたちが、あまりの盛り上がりっぷりに戦意を喪失してしまうくらいなので、騙されたと思って1度見て欲しいですね。

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伊藤 前夜祭も面白いですよね。

坂口 前夜祭と言っても元々はスタッフが焼き肉をしていただけなんですが、楽しいものだからだんだん人が集まるようになり、豪華な料理人も来るようになり、ついに去年は豚の丸焼きをしました。今年はアメリカ人のシェフがカリフォルニアから来ることになっています。

伊藤 前夜祭もチケットが出ているので、フェスは事実上2DAYSですね。

坂口 気づいたらそうなってしまいました。あと、毎年フェスを土曜日にやっているのは、翌日の日曜日に1日かけて鹿児島をあちこち回ってほしいなと思っているからです。車で来たら行動範囲が広がるので、指宿、霧島、島に行くなど、そんな楽しみ方をして欲しいですね。

伊藤 車以外で行かれる方は、福岡からの場合、新幹線で鹿児島中央駅まで行って、そこから直行バスに乗り換えて行くのがオススメです。バスは事前予約が必要なので気をつけて下さいね。

坂口 次はグッドネイバーズ・ジャンボリーの会場でお会いできたら嬉しいです!

伊藤 坂口修一郎さんでした。ありがとうございました!

鹿児島ならではの魅力が詰まったフェス

1時間という限られた時間ながら、ここには収まらないほどの濃いお話が満載だった、今回のグッドネイバーズ・ミーティング福岡。

鹿児島ならではの魅力をしっかりと見つめ、持ち味を存分に活かしているからこそ、遠方からでもわざわざ訪れたくなるような強い求心力を持ち、年々規模が大きくなっているのだなと、お話を聞いている中で感じました。

大人も子どもも自由な楽しみ方ができるグッドネイバーズ・ジャンボリー2016は、8月20日(土)に開催。

前売り券だけでチケットが完売してしまうこともあるそうなので、気になる方はお早めのご購入をオススメします。