業界の常識にとらわれない「未来食堂」が起こすイノベーション

昨年9月に東京・神保町にオープンした「未来食堂」。

店内は一見すると昭和レトロで、懐かしさすら感じる雰囲気が漂いますが、一体どういったところが“未来”なのでしょうか。

合理的で効率的なシステム

sekaisan

未来食堂をひとりで切り盛りする小林 せかいさんは、IBMクックパッドで6年間エンジニアとしてキャリアを重ね、飲食の世界へと飛び込みました。

未来食堂は「あなたの“ふつう”をあつらえる」をコンセプトに、小林さんがエンジニア時代に培った、合理的で効率的な考え方を活かしたさまざまなシステムが随所に取り入れられています。

小鉢をオーダーメイドする「あつらえ」

そのひとつは「あつらえ」。

通常の定食についてくる小鉢を、プラス400円で、その日の気分や体調に合わせて“オーダーメイド”することができます。

店内の黒板に書かれたその日お店にある食材から選んだり、「のどが痛い」「今日はいいことがあった」など、気分や体調に合わせたあつらえも可能。

ひとりひとりがメニューを好きにカスタムできるという画期的なシステムです。(※18時以降限定のサービスです。)

お手伝いで1食無料の「まかない」

mamezara

もうひとつは、50分お店のお手伝いをすることで、1食分がサービスになる「まかない」。

1度でも通常のお客様として来店すれば、誰でも応募が可能です。

サイトには、まかないを体験する方向けに丁寧なガイドラインが掲載されているため、初めてでも安心して臨むことができます。

まかない経験者のみを対象とした「まかないさんありがとうの日」や、まかない体験の回数に応じた特典も用意されています。

特別体験の提供

inside

こういったシステムの生まれた背景には、以前より小林さんが抱いていた、既存の飲食店への素朴な疑問があります。

「なぜレシピを隠すのか」「なぜ毎回同じものを提供すべきなのか」「なんでメニューってあるんだろう」…そんな疑問に自分なりの答えを出す形で、また、食材のロスや回転率などの効率化をはかるための解決策としてさまざまなシステムが誕生しました。

これらのシステムは、一見すると非効率なのではないかと思われますが、あつらえはお店にある食材からつくるため限りなく食材のロス率が下がり、まかないに関しても食材の原価のみで50分の労働を得ることができます。

それだけでなく、どちらもお客様に“特別体験”を提供することで、体験したお客様がお店のファンになってくれるという、みながハッピーになるシステムなのです。

“誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所”に

menu

未来食堂とお店を訪れたひとりひとりのお客様との関係を大切に思うからこそ生まれた、常識にとらわれないさまざまなシステム。

そこには、未来食堂が“誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所”でありたいという思いが根底にあります。

オーナーの小林さんは、事業計画書の中で未来食堂の目的についてこう語っています。

「人と人との結びつきが希薄化している現代日本において、未来食堂では、来店されたお客様と真正面から向き合い、“その方にとって”良い物を提供する。

スケールは小さいながらも、このような豊かな場所をこの国に存在させること・知らしめることが、未来食堂の事業目的です。」

1月10日からは新たに「ただめし」というシステムが加わりました。まかないシステムを利用した方が、誰かのために1食分を“ただめし券”として置いていき、困っている方が誰でも使用できるというシステムです。

飲食店における店主とお客さんの関係を、「お金を払う人、貰う人」という当たり前の関係で終わらせず、新しいあり方をこれからも模索し続ける未来食堂。

いつか必ず訪れてみたいお店のひとつになりました。

未来食堂が日々つくりだしていく“未来”が、これからも楽しみですね。

Related Posts