サンフランシスコの人気店 TARTINEは看板のないベーカリー

こんにちは、ブランコの舘です。私は今年福岡に移住して来ましたが、昨年はアメリカのサンフランシスコに住んでいました。

そこでは、洗練された「アイデンティティー」を街の至る所で感じました。

サンフランシスコの人気店が、続々日本へ進出

サンフランシスコは、サードウェーブコーヒーなどの良質な「カフェ文化」が根付いている街です。世界中からその店を求めてお客が集まる人気店がいくつも存在します。

今年の春、サンフランシスコ発祥のブルーボトルコーヒーが東京にオープンしたことで有名ですが、ほかにも「TARTINE(タルティーン)BAKERY & CAFE」というサンフランシスコのベーカリーが代官山の「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」にオープンすることをご存知でしょうか。

今回は、私がサンフランシスコで訪れたTARTINE本店のことを紹介します。

看板のないベーカリー

サンフランシスコでも特にお洒落な名店が連なる「ミッション地区」にTARTINEはあります。休日の昼下がりは、いつも店の外まで長い列が伸びています。

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しかしこの店、人気店の割には「あるもの」が抜けているのです。それは、店のサインがあるべき場所に何も書いていないこと。入り口の上には、黒く塗りつぶされた壁があるのみ。

そう、TARTINEは「看板のないベーカリー」なのです。

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お店の名前は、入口のショーウィンドウの向こうに無造作に立てかけられた、小さな紙にひっそりと書いてありました。

街頭に名前を主張することなく、それでいてこんなに多くの人たちがパンを求めて列をなしています。なんてシンプルでかっこいい、大胆な潔さでしょうか。

西ヨーロッパ仕込み、サンフランシスコ育ち

TARTINEという単語は、フランス語で「トースト」を意味します。

オーナーシェフのチャド・ロバートソンさんは、アメリカで生まれ、西ヨーロッパに渡りパン作りの修行を積んだのち、サンフランシスコでTARTINEをオープンさせました。

TARTINEは使う小麦粉や水に大変こだわりがあることで有名です。昔ながらの手ごね製法を守り、健康に良いパンを作りたいという強い信念を持っていらっしゃいます。

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看板商品は「サワードゥ」と呼ばれる酸味の強いサンフランシスコのカントリーブレッドですが、私はその日、ブランチを食べるために訪れたのでボリュームたっぷりのサンドイッチとスイーツをオーダーしました。

味が細部にまで染み込んだ、ハイクオリティーなサンドイッチでした。スモークベーコンを“Juicy”と表現できるなんて、あまりないんじゃないかと思います。

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混雑しているうえに、それほど広くない店内ですが、高い天井と大きなガラス窓、そして店の外にも設置されたテーブルのおかげで外との境界線が曖昧になり、圧迫感なく広々として見えます。

吹き抜けの壁に掛けられたアートは、毎月違ったコレクションに変わっていくのだそうです。

主張せずとも、確立されたアイデンティティー

お店を出た時にもう一度、真っ黒の看板を見上げると、黒いペンキの向こうにはうっすらと文字を隠した跡が見えました。

てっきり「かつて看板があったけれど人気が出すぎたから隠した」のだと思っていましたが、よく見ると隠しているのはこの店の名前ではなく以前のテナントと思われる別の店の名前でした。

つまり、TARTINEは最初から看板を持たないことを決めていたのです。

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アメリカは「I」の文化、アイデンティティーを大事にする文化です。でも、サンフランシスコで暮らしていて感じたことは、自分のアイデンティティーを持つこととグイグイ自己主張をすることは、イコールじゃないんだということです。

本当にアイデンティティーを持っているものは、いらない部分をむしろ削ぎ落として、内側の芯の部分を高めることに力を注いでいます。

それは、例えばAppleやGoogleなどのIT企業を数多く産出したサンフランシスコならではの、洗練された「I」の文化だと思います。

それはシンプルな見た目であるほど良いということではありません。豪華だろうと、複雑だろうと、繊細だろうと、その奥に「アイデンティティー」をしっかりと持ったものは、きっと何であれ強いのです。

サンフランシスコで、それぞれの信念を持った素敵なお店を訪ねるうちに、私は様々なことを学びました。

そして日本へ旅をする

たくさんある店舗のうちの一つではなく、TARTINE初の海外進出が東京だなんて、なんだか嬉しくなりますね。

オーナーは以前から日本好きを公言していたそうですが、「TARTINEのパン作りに適した小麦粉と水を日本でも見つけたから」という理由もあるそうです。

洗練されたアイデンティティーを持ち地道に良いものだけを作り続けるTARTINEの姿勢は、サンフランシスコ的でありながら、日本のモノづくりの「原点」に近いものも感じます。

TARTINEのシンプルな信念は、日本人が本来持っている「理想の姿」と言えるかもしれませんね。