津屋崎人形インタビュー

和やかで愛くるしい津屋崎人形が出来るまで。

前回の記事でも紹介したように、津屋崎人形には長い長い歴史があります。
その歴史とともに受け継がれているのはもちろんその製法です。
津屋崎人形の形を創る2枚型の「型」。
最近では業者に型を作ってもらう方が多いようですが、
原田さんはご自身で作られているのだそう。
昔は土で作られていた型も現在は石膏になり、だいぶ楽になったとおっしゃる原田さん。
それでも、型は人形の大元を作る重要なものでもあり
細やかな模様が入っている部分をみると、とても神経を使わていることが想像できます。
その型に入れ込む粘土の量にも工夫があり、大きい人形はバランスを保つために上部を薄く
下部を厚くしてるのだそう。製法上中が空洞で繊細な造りの人形ですが、
このような隠された工夫が人の生活に寄り添い続ける歴史の土台となっているのかもしれません。
型ができれば「乾燥」へ。
焼く前に水分を飛ばすために人形を乾燥させるのですが、
ひび割れを防ぐために自然乾燥を行っているのだそう。
せっかくなのでと釜や型が置いてある場所へ案内してくださった原田さん。
その場所へ移動するため外へ出た際に感じた津屋崎の風は穏やかで、この風の中で乾燥していく工程は
独特な和やかさがある津屋崎人形を作り上げるのに重要な役割であると感じました。
乾燥が終われば、焼く工程に入ります。
使用するのは前回の記事でも紹介した100年の歴史がある釜。
上部にある大きな窪みの中に、大きい人形から順番に重ね入れて、
800度から900度でじっくりと8時間ほど焼いていく。
100年もこの高温に耐えながらじっくりと人形達を焼く釜。
その凄みがずっしりと構えるその姿に表れています。
他にも特に気を使われていらっしゃるのが顔料。
アクリルと顔料を併用されているので、その性質や見え方を
考えながら配色されています。
顔料には使いにくいものや使いやすいものがあるらしく、
それぞれ各地から取り寄せて使用されている原田さん。
使いにくかった顔料について苦笑いを浮かべたり、
生きた表情を作るために施す化粧について真剣に話される原田さんを見ていると
彩がいかに人形に命を吹き込んでいるのかが伝わります。
制作過程についてお話しされる中で「勘です。『勘が多いですね』とよく言われます。」
とにこやかにおっしゃっていた原田さんですが、体が覚えているんですよね。
まさに、人形と一心同体です。

時代の反映

前回記事で取り上げた津屋崎人形をより楽しむためのポイント
「表情」、「耳」、「傾き」。
それ以外にも是非気にかけて欲しい部分があります。
それは、「どの人形がどの時代に創られたのか」です。
長い歴史のある津屋崎人形。
代々受け継がれる工芸品でありながらも昔のものにとらわれず、
その時々のものを取り入れてきたのだそう。
例えば戦時中には軍事ものを制作。昔流行っていた滑稽ものも現在も多く見られます。
眠った童子がモチーフになっている人形達は、「寝る子は良く育つ」の願いのもと
昔眠りものが流行ったことがきっかけ。
宮地岳線が廃線になる際に最後に走った361形の電車もあります。
最近のものでいえば、人種を超えて多種多様になってきているゴン太。
グローバル化が進む今の時代ならではの展開です。
どの人形がどの時代に作られたかを知った上で見てみると、
自分の知らない時代が垣間見れてより面白いですよね。

伝統の継承

長い歴史とこれだけの丁寧な過程で形作られてきた津屋崎人形。
世に出てこなかった作品はあるのか、あったとしたらその後どうなっているのかを伺うと、
「年に一度、訳あり品の色つけワークショップを行っています。」とのこと。
こうやって商品として世に出ない作品をいろんな人が触れられる場所に出すことがまた、
伝統の継承につながるのでしょうね。
興味のある方は、まずは筑前津屋崎人形巧房さんが開催してらっしゃるモマ笛の絵付けワークショップに行かれて
みてはいかがでしょうか。
特に、工房で開いてらっしゃるワークショップに行かれると、本日紹介させていただいた
津屋崎人形の魅力に直接触れられるかもしれません。

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