「FITS 2015」レポート2−ホームセンターにおけるITとIoTの活用について

「最先端のテクノロジーを学び、これからの仕事とキャリアを考える」というテーマのもと、5月29日(金)西鉄イン福岡にて開催された「FITS 2015」の各セッションのなかで、九州各地と山口で63店舗を展開しているホームセンターのグッデイや最新デジタル機器を備える工作スペースのファブラボ太宰府などを運営している、嘉穂無線株式会社代表取締役副社長の柳瀬隆志さんによる「ホームセンターにおけるITとIoTの活用について」のセッションをレポートします。

誰にとっても身近な存在であるホームセンターでは、ITをどのように活用しているのでしょうか。

ホームセンターとITとの関わり

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テレビCMの「グッデイならできる♪」でお馴染みのホームセンター、グッデイ。セッションの冒頭では店長キャラクターの良日出来太(よいひできた)さんが特別ゲストとして登場し、会場内には大音量でCMソングが流れ、大盛り上がりのなかで柳瀬さんのお話がスタートしました。

グッデイでは1990年、同業他社に先駆けてPOSシステムを導入しデジタル化への第一歩を踏み出しました。全商品にJANコードを貼付する手間などデメリットもあったようですが、自動発注システムは業務を効率化させるうえで様々なメリットをもたらしました。

しかしながら柳瀬さんが入社された2008年当時は、グッデイにとってITはほぼ無縁のもので、社内ではインターネットの利用は一切禁止されていて、コーポレートサイトも社員のメールアドレスもない状況でした。

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柳瀬さんご自身は個人的には「新しモノ好き」で新型のスマートフォンをいち早く手に入れたり、ITについても強く興味を持たれていますが、それらを会社として導入することを考えた時「パソコンなんて触ったことがない」などと言うようなご年配の従業員の顔が目に浮かび、グッデイにITを取り入れることに不安もあったのだとか。

わずか7年前とは思えないアナログ的な環境だったのですね。

新しいことにチャレンジする会社

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入社後の1年間はグッデイ店舗にて業務を行っていた柳瀬さん。2009年からは本部にて「新しいことに積極的にチャレンジする会社」になるための変革に着手し始めました。

まずは九州各地と山口の方々にはお馴染み、「グッデイならできる♪」のテレビCMの放映を開始したことと同時に、Webサイトを立ち上げました。また2010年には物流センターを開設してインフラを強化し、さらに今年度から「Google Apps」を導入しました。

本部のみならず各店でもスケジュールやメール・ファイルを共有してITの活用を推進させ、特に本部のオフィスでは会議室予約用のホワイトボードの必要性がなくなり、Googleカレンダーにてスケジュールを管理し始めてからたった半日でそのボードを取り外してしまったほど。

確かに、最近では社員のスケジュールや会議室の空き状況などを管理するためにホワイトボードを使用している会社は減ってきているようにも思います。各自がPCやタブレット・スマートフォンで情報を共有すれば、社内外どこでも入力や確認が可能ですよね。

また店舗ではBLEセンサーによる動線調査を実施し、店内動線をヒートマップで可視化することで人員配置を見直しました。従業員にはこの調査の意味を理解してもらい、自分の行動を細かく会社に把握されることへの抵抗感をなくして前向きに取り組んでもらえるよう努めました。

常に監視されるというのは誰でも嫌なことかもしれませんが、全員が情報を共有できて検証もしやすく、どうしたら売上が上がるのか、またどうしたらお客様のニーズに応えられるのか、一人ひとりが主体的に考えるきっかけにもなりますよね。

ITを活用する目的

「モノのインターネット」である「IoT」。ネット社会とは縁遠かったグッデイにITが導入され、売上も含め様々な結果が生み出されました。「単純に“IoTってすごい!!”と思った」と、屈託のない笑顔でお話されていた柳瀬さんがとても印象的でした。

今後もIT・IoTを活用していくうえで、グッデイでは従業員がタブレットかスマートフォンを携帯し、在庫確認などをバックヤードではなくお客様の目の前で行えるような試みを予定しています。

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セッションの締めくくりに、柳瀬さんが残されたメッセージは「ITを活用することが目的ではない」ということ。

IT・IoTによって業務を効率化することが目標であっても、それは目的ではなく、新たに生まれた時間を有効に使って「人間にしかできない」笑顔や接客を徹底し、人間的な空間を作ることこそがITを活用する真の目的なのです。

このメッセージには会場の誰もが深く頷いていました。

今回のお話は「機械的なモノ」と「人間的なモノ」を融合させるホームセンターらしい発想で、まさにIoTの概念そのものだったように思います。とても分かりやすく、IT・IoTを身近に感じられるようなセッションでした。