「竹の、箸だけ」にこだわるヤマチクが、創業50年で初の自社ブランド開発をした理由

福岡県との県境、熊本県玉名郡南関町に工場をかまえる株式会社ヤマチク。1963年の創業以来、竹を活かしたお箸をつくり続けています。「竹の、箸だけ。」というコンセプトを掲げながら、日々ものづくりと真摯に向き合う、ヤマチクの三代目で専務取締役、「箸おじさん」こと、山﨑彰悟さんにお話をうかがいました。

竹のお箸をもう一度食卓の定番に

 

―Twitterの自己紹介欄などにも「箸おじさん」と添えられていますが、とてもいい愛称ですね。

特に深い意味はないんです。友人から「箸をつくっているおじさんです」と紹介され、「どうも、箸おじさんです」と答えたことがきかっけです(笑)。でも「職人」や「後継者」というほど固くなく、生活雑貨をつくっているメーカーとしてはちょうどよい愛称だと気に入っています。

 

―不思議と親しみが湧く、素敵な愛称ですね。ヤマチクのWebサイト、さらには工場の外観にも大きく掲げられている「竹の、箸だけ。」というキーワードが、すごく印象的です。こだわり続けている理由を教えてください。

お箸という漢字の部首が竹冠であるように、お箸の歴史は竹からはじまりました。軽くてしなやかな竹のお箸は、日本人の「残さずきれいにいただく」という食事の精神性を実現する心強い味方でした。しかし今では安価な輸入品や、「マラス」や「鉄木」といった輸入木材、プラスチックが主流になってしまいました。せっかくいいものだから、竹のお箸をもう一度食卓の定番にしたい。そんな思いで、「竹の、箸だけ。」をつくり続けています。

 

―熊本県で育てられた竹の特徴を教えてください。

熊本県に多いのは、孟宗竹(モウソウチク)という国内で自生している竹で最も大きな品種です。とても丈夫なので、お箸にするのに適しているんです。

 

―ヤマチクさんのお箸の特徴を教えていただけますでしょうか。

竹の美しさや木目を活かした、シンプルなデザインにこだわっています。またつまみやすさを追求した箸先が細いシルエットも特徴。多くのプロの料理人さんにも盛り付け用のお箸としてご提供させていただいているんです。

 

―手にとりやすい値段設定もうれしいですね。

そうですね。ぜひ家族みんなで使っていただけたらと思っています。カラーバリエーションが豊富なものも多いので、誰のお箸なのかわからなくなってしまう心配もないですよ(笑)。

竹のお箸でいい循環を生み出す

 

―山﨑さんがnoteでも訴えられている、『くらしから竹製品がなくなり、竹を切る人達や竹材屋さんが減ってしまいました。そして、山は荒れてしまったのです』ということばがとても印象に残りました。どうしたら改善されていくとお考えでしょうか?

竹を切る人たちや竹材屋さんが儲かるのに大切なのは「竹の単価が上がり、なおかつたくさん竹が必要とされること」だと思います。私たちは竹のお箸しかつくれませんが、竹のお箸を食卓に広げることでそれを実現させようと思っています。竹を切る人たちが増えれば、おのずと山はきれいになると思います。

「okaeri」に込められた思い

 

―2019年に初の自社ブランド「okaeri(おかえり)」を立ち上げられたのはどうしてですか?

「okaeri」のコンセプトは原点回帰です。「竹のお箸をもう一度日本の食卓へ戻す」ためのアイコンになればと思い、立ち上げました。

 

―社員の方のモチベーションアップにもなっているんではないでしょうか。

そうですね。OEMだと、どんなに有名なブランドのお箸を手がけたとしてもヤマチクの名前が表にでることはありません。自社ブランドをつくることでモチベーションが上がるだけではなく、新たな知識やノウハウを吸収する機会が増えるのでは、と考えています。それから先程も申し上げました通り、竹を切る人たちや竹材屋さんが儲かる仕組みづくりにひと役かいたいという気持ちも大きいですね。

 

―パッケージもとても美しいですね。

ご自宅用にはもちろん、贈り物にも使っていただけるようなパッケージを目指しました。昔から箸をプレゼントするのは「はしわたし」と語呂もよく、粋な贈り物とされてきました。これまでは、箸をプレゼントする=化粧箱に入れることが多く、もっとカジュアルな形式があってもいいのではないかと思いました。お食い初めや入学式といったお子様用のプチギフトや、出産祝いや結婚祝いに家族分プレゼントする方が多いですね。

 

―今後、「okaeri」をどのように育てていきたいですか?

okaeriは、アジアのデザイン賞である「Topawards Asia」をいただいているものの、まだまだ販路拡大は道半ばです。「竹のお箸を、もういちど日本の食卓へ」届けるために、たくさんのお客様がどこでも買えるよう、まずは取扱店舗さまを増やしていきたいですね。

 

―株式会社ヤマチクとしての今後の展望を教えてください。

ヤマチクの仕事を、竹のお箸をづくりに携わる全ての人にとって物質的にも、精神的にも「やりがい」のある仕事にするのが僕の夢です。
職場以外であった友人や家族に「この仕事、最高なんだよ!」と自慢できる「やりがい」を提供できるように、様々なことにチャレンジしていきたいです。

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